趣味は『新しい文化に触れること』 ~旅と音響の意外な関係
― 遊びが無くて困っている風上社長。やっぱり日頃の業務がお忙しいのでしょうか?
風上「忙しいは忙しいんですけれど…。強いて僕の遊びといえば、『旅行』なんです。日常的に楽しめる趣味と違って、年に1回、行けるか行けないかですから」
― 今、どこにでも行けるとしたら、どちらへ行きますか?
風上「また、東南アジアを廻ってみたいと思っています。入国が難しくて、まだ行ったことがないのはブータン。以前は、専用のツアー会社に申し込まなくてはいけなかったり、1日の滞在税が結構高くて、ツアー料金が高額だった記憶があります。行くなら、日本や西洋の文化が入っていないところへ行ってみたいですね」
― お休みの日は、何をしてお過ごしですか?
風上「何してますかね…。ホントにね、無趣味なんです(笑)」
― ご趣味はご旅行ですものね。
風上「非日常の趣味ですからね。それで、ということではありませんが、毎年スタッフを連れて視察旅行へ行っているんです。昨年はアメリカのニューヨーク、ラスベガス、ニューオリンズ、今年はドイツのフランクフルトへ行きました。毎年『ムジクメッセ』という世界最大級の楽器、音響照明機器 の展示会があるので隔年くらいで観に行っています。フランクフルトは 観光
― 視察旅行でドイツへ。素敵ですね!
風上「フランクフルトでレンタカーを借りて、制限速度が無いことで有名なアウトバーンを180km/hで走破、シュツットガルト近郊の Backnang という街で d&b audiotechnik という世界的なスピーカーメーカーの工場を視察したり…。行き先や移動方法、航空券や宿泊手配等、すべて社員たちが自分で行っています」
― 海外出張もすべて自分たちで手配できる! ケイズサウンドのスタッフは、高度な音響技術に加えて素晴らしい強みをお持ちですね。旅行に行かれる時に、風上社長ご自身が愛用していらっしゃる道具はありますか?
風上「ないです。昔、バックパックで旅行している時は、何にも持たずに旅行していましたから。僕ね、モノに興味が無いんですよ。車も持っていないしね」
― ご自宅の音響設備はどうなっていらっしゃるんですか?
風上「自宅の設備は20歳の頃に買った…、いや、違うな。壊れちゃったので、全部捨ててしまいました(笑)。だからといって、音楽を聞きたくないということではないんです。住宅環境とか、家族が居たり、定時に帰る仕事じゃなかったりして。仕事の上でも音楽を聴かなくちゃな。とも思うのですが、たまたま、今はそういった環境が整っていない。ということですね」
― モノに執着が無い。学生時代に欲しかった機材も、良い音を聞くために必要だっただけ。ということなのでしょうか
風上「そうなんです。結果、良い音が聴ければよいので、その設備そのものが欲しいわけじゃないんです。高価な機材のある大きな家に住んで、高級な自動車に乗って…、そういう理想はないんです。早々に経済発展を遂げた現在の日本では、金銭的、物質的な発展は既に過去の価値観なんだと思っています」
― お好きな音楽、映画、書籍がありましたら、教えてください
風上「唯一、読み続けているといえば、そちらに並べてある専門誌です。ほんとに遊びが無さ過ぎてつまらない人間ですね(笑)」
― プロサウンド! 音響関係の専門誌ですか?
風上「そうですね。僕らPAだけでなく、レコーディング、放送業界だったり、音に携わる専門家が読むものです」
― 音の専門家を目指す学生にオススメしたい専門誌ですね。
風上「僕も勉強しなきゃと思って、専門学生時代に読み始めたのですが、当時は何が書いてあるのか、全く分からなかったです(笑)」
― 遊びが無い。という風上社長ですが、自由になる時間はおありですか?
風上「基本常に自由ですね(笑)。
― ストレスを感じる時はありますか?
風上「あまり感じないです。好きな仕事をしていますし、僕らの仕事は毎日毎日、完結するんですね。例えば、現場に入って、リハーサルして、本番が終わったら撤収して、ミュージシャンと打ち上げする。1回1回でストレスを発散させている気がします」
― そう聞くと、音響のお仕事は、なんだか旅っぽいですね。
風上「そうですね。僕にはきっとそういうのが性に合っているんでしょう(笑)」
― 風上社長は『音響』というお仕事に対して、本当に真摯に向き合っていらっしゃる。そして、『仕事』と無関係の『遊び』をするのではなく、ご自身の仕事の中に多くの喜びや楽しみを見つけていらっしゃるのでしょう。お話を伺っていて、『仕事』と『遊び』を区別して考える必要はない。ということに改めて気づかされました。
― 今後の目標と夢を聞かせていただけますか?
風上「札幌という素晴らしい街に住みながら、道外でも仕事をしていきたいです。最近は海外からもオファーを頂くようになりました。世界中の人たちとふれ合って仕事する、その体験を通して、社員それぞれが素晴らしいエンジニアになってほしいと思って仕事をしています。『この仕事で生きていきたい』と熱望するスタッフと一緒に良い音を創り、お客様と感動を共有する。その素晴らしい業務の対価で社員とその家族が心身ともに幸せになる。これが一番の目標です」
― 個人的な夢はお持ちですか?
風上「そうですね。早いことリタイアして旅に出たいと思っているんですよ(笑)。夏は北海道に居てもいいんですけれど、冬はどこか暖かいところへ行くような、渡り鳥生活をしたいですね」
― 渡り鳥生活! 良いですね。今日は、音響というお仕事について、本当に興味深く伺いました。ありがとうございました。
風上「この記事を読んで、音響業界にお一人でも興味を持って頂ければ幸いです。ありがとうございました。」
風上 哲也 (かざかみ てつや)
1971年 1月12日生まれ 登別出身 A型小学校5年、80年代アメリカ音楽と出会い、
その頃から『良い音』を追求し始める。経専学園卒業後、テレビ音効の仕事を経て、
1993年 ㈱パワーハウスエージェンシーへ入社。
1995年 海外研修先のブロードウェイでミュージ
カル『TOMMY』を観て衝撃を受ける。
1999年 アメリカ周遊、アジア横断の旅を経て、
2000年 ㈲ケイズサウンドクリエイト入社。
2010年 ケイズサウンド㈱ [Web] 設立。
(取材:2016年 10月)