音楽紹介 [21] 『クール・ストラッティン』 2017年 1月号


このレビューが配信される頃は、ちょうどクリスマス!

でも1月号なので挨拶は『新年明けましておめでとう』ですね。
2016年もウェブマガジン『タシナム』に一年間お付き合い頂きましてありがとうございました。2017年も引き続きよろしくお願い致します。

 

今月の配信にあたって新年号にふさわしいアルバムをいろいろと考えましたが、ジャズって新年に関する曲ってあまり無いんですよね。

『世界は日の出を待っている』…?…ちょと古過ぎか…

『朝日のようにさわやかに』…?…うーん違うな…
『ワルツフォーデビー』…??…もっと違う…そんな訳で新年企画は早々と断念いたしまして、ジャズアルバムの名盤中の名盤『クール・ストラッティン』を紹介いたします!

なぜそのアルバムなのかって?録音が1月5日だから…正月ネタです…ゴメンなさい。

 

クール・ストラッティン

 ソニー・クラーク

 録音:1958年1月5日
 ニュージャージー

 

 

メンバー

ソニー・クラーク(p)
アート・ファーマー(tp)
ジャッキー・マクリーン(as)
ポール・チェンバース(b)
フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

 

収録曲

1.Cool struttin’
2.Blue minor
3.Sippin’ at bells
4.Deep night

 

 

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sonny clark / cool struttin’ 画像元: https://goo.gl/WKnu0G


 過去にジャズアルバムは星の数ほどあれど、これほど日本人に愛され続けたジャズアルバムは他に無いでしょう。

日本においては説明不要の名盤中の名盤。
でも、実はこのアルバム、アメリカでは全然売れていません。
そもそもソニー・クラークなんて、余程のジャズ通にしか知られていない存在なのですから。

なぜ日本で愛されたのかは後ほど検証してみるとして、まずはメンバー紹介から。

 

メンバー紹介

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Sonny Clark  画像元: https://goo.gl/Acc5ki

 ソニー・クラーク (Sonny clark)

1931年7月21日、アメリカ合衆国ペンシルベニア州出身
ジャズ・ピアニスト、作曲家
4歳からピアノを始める。
6歳でラジオ番組に出演しブギウギピアノを披露。
1957年、ニューヨークに拠点を移しソニー・ロリンズと共演。その年ブルーノートと契約し『1500番台』から数枚のアルバムを残している。

1963年1月13日、ヘロイン中毒にて31歳で死去。

 

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 アート・ファーマー (Art Farmer)

1928年8月21日、アメリカ合衆国アイオワ州出身。
ジャズ・トランペット、フリューゲルホルン奏者。
1949年、ライオネル・ハンプトン楽団に加入。
1968~1970年、活動の拠点をウィーンに移す。
1990年、ヨーロピアン・ジャズ・トリオと共演。
ベーシスト、アンディ・ファーマーとは双子の兄弟。

1999年10月4日、他界。

 

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  ジャッキー・マクリーン (Jackie McLean)

1931年5月17日、アメリカ合衆国ニューヨーク州出身。
ジャズ・サックス奏者。
ブルース・ギタリストだった父の影響で音楽に興味を持ち、幼少期からサックスを始める。
ハイスクールの学生時代にケニュー・ドリューやソニー・ロリンズと共演。
1951年10月、ソニー・ロリンズ、アート・ブレイキーと共にマイルス・デイヴィスのアルバム『ディグ』の録音に参加。その後も何度かマイルスと共演する。

1959年、ブルーノートと契約。同年、リーダーバンドにてアルバム『スイング・スワング・スインギン』を発表。
1989、1987、1996年の3回、マウント・フジ・ジャズ・フェスティバルで来日している。

2006年3月31日、コネチカット州で亡くなる。

 

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paul-chambers 画像元:https://goo.gl/ikrPG6

 ポール・チェンバース (paul-chambers)

1935年4月22日、アメリカ合衆国ペンシルベニア州ピッツバーグ出身。
ジャズ・ベーシスト
10代の頃からデトロイトで演奏活動を開始する。
1954年、ニューヨークに活動拠点を移し、ジョージ・ウォリントンのバンドに加入。
その後、マイルス・デイヴィスのバンドに移籍する。
1962年のマイルス・バンドの解散後は、ウィントン・ケリーのバンドで3年間活動し、その後フリーとなる。その他、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズ、をはじめ、多くのミュージシャンとレコーディングを行った。 プレイスタイルはアルコやピチカートによるアドリブソロと、粘りのある4ビートのベースライン。

ジョン・コルトレーンの名曲『Mr・P・C』はポール・チェンバースのニックネーム。
1969年1月4日、大量の飲酒や麻薬が原因の肺結核で死去。

 

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Philly Joe Jones 画像元: https://goo.gl/r3vWPO

 フィリー・ジョー・ジョーンズ (Philly Joe Jones)

1923年7月15日、アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア出身。
ジャズドラマー。
名前の『フィリー』はフィラデルフィアという意味。
偉大なドラマー、ジョー・ジョーンズと区別するために付けたと言われている。
1955~1958年、ジョン・コルトレーン、ポールチェンバース、レッド・ガーランドと共にマイルス・デイヴィス・クインテットの黄金時代を支えた。
裏拍を強調した三連符のリズムパターンが得意。
ビバップ、バードバップ期を代表するドラマーの一人。

1985年8月30日他界。

 

 

それにしても素晴らしいメンバー構成ですね。偉大なるジャズジャイアント達がズラリと並んでいます。生き様も凄いけど、死に方も凄いですね~。大量飲酒にヘロイン中毒…当時のニューヨークのジャズミュージシャンらしさ全開です(笑)

 

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Sonnyclark  画像元:https://goo.gl/hLKyYE


それでは曲の紹介

1.クール・ストラッティン
ソニー・クラークのオリジナル曲で、アルバムのタイトルナンバー。
曲は単純なマイナーブルースなのですが、これほど曲調とジャケット写真が曲名と一致する曲は探してもなかなか無いでしょう。まさに優雅でクールに歩く女性のイメージにぴったりです。曲名のストラット=『気取って歩く』です。ポールのアルコ(弓引き)も最高。ソニーの作曲家としての才能も充分に分かる一曲。

    

2.ブルー・マイナー
2曲目もソニー・クラークのオリジナルで曲名通りのマイナーブルース。
テーマのマクリーンとファーマーのアンサンブルが格好の良いこと、惚れぼれします。
アドリブはマクリーンのアルト→ファーマーのラッパ→ソニーのピアノ→PCのピチカートの順番。

 

3.シッピン・アット・ベルズ
マイルス・デイヴィスのオリジナル曲。マイルスの演奏よりソニー・クラークの演奏で世に知られるようになった曲。強く印象に残るテーマではありませんが、マクリーンとソニーのアドリブが冴えています。リラックスした雰囲気でアドリブを楽しんでる印象。

 

4.ディープ・ナイト
1曲目と2曲名があまりに素晴らしいので隠れてしまいがちですが、この曲は相当にいいです。哀愁たっぷりで切ないテーマが最高です。それでいてテンポは悪くない、曲名通りの都会の夜を感じさせてくれる一曲。ソニーのピアノが妖艶で美しい。

 

1960年代のジャズ喫茶ブームの時のこのアルバムの売れ行きは凄かったらしい。
本場アメリカでは全然売れていないのに、日本から注文がどんどん入るから、ブルーノートの創設者のアルフレッド・ライオンも首をひねっていたとか。

なぜアメリカで評価されていないのに、日本では売れに売れて名盤中の名盤とまで言われるようになったのでしょうか?

それはソニー・クラークの演奏スタイルと日本人の性格に理由があると考えられます。
ソニーの演奏の特徴は、妖艶なピアノタッチ、哀愁を帯びた物悲しいソロ、その辺がちょっと地味で、けっして陽気な民族ではない日本人の性格に受け入れられたのかもしれません。
ソニーは演歌に通じる暗い部分もありますからね。

 

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Sonny Clark  画像元: https://goo.gl/9IUwLO

 

演奏良し、曲調良し、そしてジャケット良しとくれば売れない訳がありませんね。ジャケットCOOLSTRUTTIN’/SONNY CLARKの文字もとっても素敵です。
2017年の年明けはぜひCOOL STRUTTIN’で!

 

株式会社 蝶道社
オーナー 紺田 晴久