こんにちは、西内恵介です。ザ・ビートルズ初の公式ライブ盤として、当時チャート1位も獲得したのに、CD化されることなく廃盤。しかし、この9月、ドキュメント映画(エイト・デイズ・ア・ウィーク/監督ロン・ハワード)公開に合わせて、リミックス・リマスターされ、めでたくCD化! やっと日の目を見そうな、「隠れていた」名盤を。
『ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!』
~ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル
ザ・ビートルズ 1977年
『THE BEATLES AT THE HOLLYWOOD BOWL』
THE BEATLES 1977年
メンバー
ジョン・レノン JOHN LENNON(Vo Guitar)
ポール・マッカートニー PAUL McCARTNEY(Vo Bass)
ジョージ・ハリスン GEORGE HARRISON(Guitar Vo)
リンゴ・スター RINGO STARR(Drums Vo)
プロデュース
ジョージ・マーティン GEORGE MARTIN
収録曲
A
1 ツイスト・アンド・シャウト(TWIST AND SHOUT)
2 シーズ・ア・ウーマン(SHE’S A WOMAN)
3 ディジー・ミス・リジー(DIZZY MISS LIZZY)
4 涙の乗車券(TICKET TO RIDE)
5 キャント・バイ・ミー・ラブ(CAN’T BUY ME LOVE)
6 今日の誓い(THINGS WE SAID TODAY)
7 ロール・オーバー・ベートーヴェン(ROLL OVER BEETHOVEN)
B
1 ボーイズ(BOYS)
2 ア・ハード・デイズ・ナイト(A HARD DAY’S NIGHT)
3 ヘルプ!(HELP!)
4 オール・マイ・ラヴィング(ALL MY LOVEING)
5 シー・ラブズ・ユー(SHE LOVES YOU)
6 ロング・トール・サリー(LONG TALL SALLY)
妻「はぁぁ.....」
俺「ど、どうしました?」
妻「秋だねぇ.....」
俺「はい?」
妻「私だって、秋くらい感傷的になるわよ」
俺「焼きイモ食いながら言うなよ」
妻「はぁぁ.....」
俺「今度は何さ?」
妻「痩せないなぁ」
俺「焼きイモ食いながら言うなって」
妻「何で痩せないんだろうなぁ」
俺「焼きイモ食うからだよ」
妻「だって秋だよ?」
俺「.....」
1976年、ビートルズ来日10周年を記念して、「ビートルズ30」と銘打たれた、オリジナルLP・各国編集盤が、東芝EMIより続々と再リリースされました。リアルタイムで体験できず、後追いでビートルズを聴いた世代には、一番なじみのあるシリーズですよね。「帯」に1から番号入っていたやつです。
その30枚目、77年に「新譜」としてリリースされたのが『ザ・ビートルズ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル(邦題:ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!)』です。
64年と65年のライブ録音からの抜粋。当時、再発LPの「帯色」が全て「赤」だったのに、これは「金色」の帯でした。だってビートルズ「初の」「公式な」ライブアルバムで、7年振りの新譜なんですも。つい「金色」にしちゃったんでしょう(笑)
新譜と言っても、すでに解散から7年が経過。録音からは、実に13年経っています。なぜこのタイミングだったのでしょうか? それは後半お話しいたしますが、録音年はバリバリの人気絶頂期です。そこで発売した方が、売れるに決まってますよね?
そうなんです。元はライブ盤として、アメリカでリリースするはずだったんです。プロデューサー、ジョージ・マーティンも、そのつもりで録音に立会いました。しかしテープを聴いてみると……。
「ポォォーール!」「ジョォーーン!」「ワーワー! キャーキャー! ウギャー!」
なんじゃこりゃ?(笑)
すさまじい歓声(ジェット機のエンジン音並みだったと、マーティンは述懐しています)に、演奏は見事にかき消されていました。結局、ライブ盤はリリースされることなく、お蔵入りになってしまいます。
まず、大前提として、この時期のビートルズは、正真正銘「アイドル」でした。ファンの中心は、ティーンエイジャーの女の子達。例えばクリスマスコンサートでは、演奏だけじゃなく、コメディな寸劇なんかを披露していました。SMAP×SMAPみたいなもんです。
ここで「録音年」の、ビートルズを取り巻く状況を、おさらいです。
■1964年の主な出来事(デビュー1年ちょいです)
1月 シングル『抱きしめたい』全米チャート1位。
2月 エドサリバンショー出演。視聴率72%!
(日本デビューシングル、『抱きしめたい』発売)
4月 全米チャートの1位から5位独占
6月 初のワールドツアー。
7月 初の主演映画『ア・ハード・デイズ・ナイト』公開。同名アルバムリリース。
8月 初の全米ツアー(1ヶ月で25都市32回の公演!)
※8月23日ハリウッドボウルでのコンサートが本作の音源。
■1965年の主な出来事
2月 米グラミー賞受賞(最優秀新人賞他)
6月 イギリス政府、MBE勲章の授与を発表(受勲式は10月)
ヨーロッパツアー。
7月 映画2作目『ヘルプ!』公開。同名アルバムリリース
8月 全米ツアー。シェイスタジアム(史上初の球場コンサート5万5千人動員)含む
※8月29日と30日ハリウッドボウルでのコンサートが本作の音源
まさに順風満帆。しかし、この翌年、日本公演を含むワールドツアー、3度目の全米ツアーを行ったのちに、彼らは一切の公演活動をやめてしまいます。
アイドルがファンの前に出ない。レコーディングアーティストとして活動する。普通ありえないですよね。本人達が「もうしんどい」って言ったところで、許されるもんでもないでしょう。
それが許された理由。本作に記録されているんです。
1曲目から、そこまで叫ぶか! って感じで女子達の悲鳴、歓声がかぶって来ます。曲にあわせて歌うとか、そんなの一切無し、ひたすら叫び続けです。
それに比べて、ビートル達の歌・演奏の確かさ。お互いの音なんて、聞こえていないはずなのに。モニタースピーカー無しですも。リンゴなんか、メンバーの口や身体の動きで、今どこ演っているのか、感じ取るしかなかったって話しです。
半狂乱の客席と、実にクールなステージの上。この温度差。なぜならステージ上に居たのは、「アイドルの仮面を被った」百戦錬磨のバンドマン達であり、かつ、それが不世出の天才2名と、その天才と渡り合える、技量とセンスを持った非凡なミュージシャン2名の、4人だったわけなんです。
そして、マネージャー、ブライアン・エプスタインを始めとする、周囲の大人達は、そのことを、充分に理解していました。そう、わかっていてアイドル人気を利用した、ザ・大人!(笑)
最後となるアメリカでの公演を終えた、ジョージ・ハリスンが言ったとされる一言。
「これでもう、ビートルズの振りをしなくていいんだ」
まさに4人の思いだったのでしょう。
公演活動中止の後、彼らは、レコーディングアーティストとして、単に天才を超えた、まさに神がかり的な作品群を、生み出し続けます。
最初のシングル『ストロベリー・フィールズ/ペニー・レイン』からして違いました。アルバムは2枚のサントラを挟み、『サージェント・ペパー』『ホワイト・アルバム』『アビー・ロード』と、後にロック史に語り継がれることになる作品がリリースされます。わずか3年の間です。
この結果、ビートルズに対する世間の受け止め方は、以下に分類されるようになります。
1)ビートルズ絶対信奉派
2)『イエスタディ』『レット・イット・ビー』なんかは、いいね派
3)もう、どうでもいい派
当然、3)が多数を占めます。可愛いかったアイドルが、ヒゲなんか生やして、騒げない音楽演り始めちゃね。2)も多いです。「ロックは苦手だけどビートルズは聴ける」みたいにおっしゃる方々です。ちなみに、1)の方々は2)の方々が大嫌いです(笑)音楽の聴き方なんか、人それぞれなんですが。
おまけに、ビートルズ末期、つまり60年代末から70年代始めにかけて、ロック界にはスーパースター達が続出しました。ジャニス、ジミヘン、レッドツェッペリン等々。こうなると世間には、ビートルズなんて前時代のものという、空気が蔓延して行きます。演奏が下手だとか、歌詞が他愛ないとか、ひどい言われようです。
しかし! しばらくすると、新世代のロックファン達も、除々に気がつき始めました。「最新ロック」の「元ネタ」の大部分が、実はビートルズなんじゃないか?
こうして、70年代半ばに、ビートルズの「(現代ロック・ポップスの)ルーツミュージシャン」としての評価が、徐々に高騰して行きます。1)絶対信奉派+新世代のファン達がマニアと化し、様々な発掘音源、行動記録など、データを収集解析。ビートルズ需要は続きました。
とにかく収集に熱心なのがマニア。そこに付け入るように、過去のラジオ、テレビ出演時の音源などを中心に、高額な「海賊版」が出回る事態になりました。しまいには、権利関係が微妙な昔の音源(デビュー前のものなど)が、ビートルズ側の反対を押し切り、メジャーレコード会社からリリースされそうになる始末!
これは、本家レコード会社のキャピトルにとっては由々しき事態です。「海賊版」を一掃するためには、その需要に応えられる、「正規盤」をリリースするのが一番なんですが…。
あっ? あった! これ、今の技術なら何とかならない? ねぇ? ジョージ? …そう。お蔵入りとなっていた、64年と65年のライブ録音! 託されたのは、ジョージ・マーティン!
ご本人が、本レコードのライナーノーツに書いておりますが、なかなかに大変な作業であったようです。何とかできあがったものの、出回っていた海賊版よりはマシかな? くらいの音質。しかし、ロックンロールバンドとして、脂の乗りきったビートルズが、ダイレクトに迫ってきます。
ちなみに、会場のハリウッドボウル。そのネーミングから、アメフトの巨大スタジアムを、連想しがちですが、ハリウッド郊外の野外音楽堂です。キャパは17,000人と、大規模な施設です。LAフィルハーモニックからクラフトワークまで、今も様々なコンサートが開催されています。
最後に、CD盤を聴きました。見事です。LPではほとんどつぶれていた、ポールのベースまでクリア! やるなジャイルズ(ジョージ・マーティンの息子でCD盤プロデューサー)。必聴です!
でも歓声は、ほぼそのまんま! 消せなかった? いや、意図的だな? これは。
ケイズ管理(株)西内恵介