突然横からこんにちわっ!タシナムに初登場、スウィングラップユニット、SOFFet(ソッフェ)のYoYo(ヨーヨー)です。
ワタクシから音楽紹介させていただくこの機会は~、ズバリ「自分の人生に欠かせないCD」このテーマで1枚選んでみたいと思います。
『SPIRITUAL PEOPLE』
SPEECH
自分は1980年生まれですのでもちろんCD世代。
小学校、中学校時代はあの8cmCD!!の新作シングルをあれこれショップでレンタルし、好きな曲順でカセットテープに録音して、自分のセレクションテープを作ったものでした。あの感覚、懐かしいですねぇ!!考えれば8cmCDが普及した年月は結構短かった気がします。時代は急速に進化する、媒体は変わる。だから「~世代」というだけで語り合える、分かり合える感覚がある・・・しみじみ。
歳を重ねれば重ねるほど、音楽との付き合いを重ねれば重ねるほど溜まってゆくCD。溜まりすぎちゃって、段ボールの奥底に眠っているものが大量な中、「自分の人生に欠かせないCD」は本当に少ない!!そして作業デスクのCDラックにちゃんと入って並んでいる。
そのラックをじーーーーっ・・・と見渡して今回1枚選んでみたのがコチラ、「SPIRITUAL PEOPLE/SPEECH」だ!
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1968年、アメリカ・ウィスコンシン州・ミルウォーキー生まれのSPEECH(スピーチ)。
学生時代をアート・インスティテュート・オブ・アトランタで過ごした後、DJ SPEECHとして活動をスタート。
1989年にラップグループ「Arrested Development(アレステッド・デベロップメント)」を結成、92年にメジャーデビュー。
1stシングル「Tennessee」がR&Bチャートで1位を獲得。アルバムは全世界で700万枚以上のセールスを記録。
ヒップホップアーティストとして初めてグラミー賞、最優秀新人賞を受賞。
95年の解散後、SPEECHとしてソロ活動をスタート。
「SPEECH」「HOOPLA」「SPIRITUAL PEOPLE」等ソロアルバムを次々にリリース。(2000年~Arrested Developmentを再結成する。最新アルバムは2016年2月16日リリース「This Was Never Home/Arrested Development」)
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このアルバムのリリースは2000年、音楽ジャンルは「HipHop、ソウル、R&B」と分類されている!
「自分の”人生”に欠かせないCD」とは、「自分の”音楽人生”に欠かせないCD」だ。つまり音楽家、音楽をクリエイトする立場として、このCD無しでは今の音楽スタイルに行き着かなかったのが事実。それくらい自分が大きく影響を受けた音楽が詰まっている1枚。
1990年代のヒップホップブーム。アメリカで次々に登場する人気ヒップホップアーティスト。日本のレコード店でも洋楽HipHopが並び、クラバー達(常日頃クラブに通う者達)、B-Boy達(ダボっとしたHipHopファッションを身にまとう者達)はレコードを掘りに行く。同時にジャパニーズ・ヒップホップシーンも勢いを増して盛り上がり出す。
そんな中、ラップミュージックにすっかり虜になっていた14歳の自分。中学校から帰るや否や、家にあったラジカセとマイクを使って曲作りに励んでいたその熱中ぶりは、小学校時代ファミコンにハマった時のようだった。そこまで自分を熱中へと引きずり込んだのが、ラップミュージックだった、のだ!!マチガイナイ、No doubt!!(ノーダッ)韻を踏む面白さ、語呂合わせみたいな作詞で作り上げる新しい音楽、バックトラックを用意してその上でマイクでしゃべっておフザケをすれば音楽となる!最高の遊びだった。
そんな遊びを一緒に楽しんでいた、近所に住む学校のクラスメート=相方と共に作り上げたカセットテープのアルバムの完成を機に、SOFFetと名付けたのが音楽家人生の始まりだった。音質も悪く、未熟そのものと言える手作りのテープアルバムだったが、気持ちはすっかりミュージシャン=音楽家だった。
音楽制作活動する毎日、14歳のガキながら!笑 あらゆるラップミュージックを聴きあさる中で出会ったSPEECH。そしてリリースされた「SPIRITUAL PEOPLE」。
ラップミュージックに虜になっていた当時の自分にとってはやや攻撃的なラップも好物だったが、そんなスタイルのHipHopアーティストが多い中、全く異色を放っていたこのアルバム。平和な世界観で”癒し”を与えてくれるような、愛に溢れたピースフルミュージックは他とは違う圧倒的な存在感だった。
ジャンルでくくるならHipHop、ソウル、R&B。それに留まらずフォーク、ブルース、ジャズ、カントリー、レゲエ等の要素があって、ビートの効いたサウンド、その上に乗っかる生楽器、ルールの無い音作りの世界が広がっているのが特徴だった。また、ラップだけじゃなく、唄歌いでもあるSPEECHのセンスの良いメロディーラップ。歌声のあたたかさ、温度感。他にはない新しさ、心地良いスタイル全てに衝撃が走ったんだなぁー。
・・・・・・・(収録曲をピックアップ解説)・・・・・・・・・・・・・・・・・
M3
Livining In The Real World 音圧の効いたビートに乗っかるフォーク、スチールギターサウンド、包み込むようなあたたかい歌モノ。
M4
Late For My Own Funeral ゆったり陽だまりに浸るような、ジャズっぽさにも通じるサウンド。
M5
Ghetto Fabulous (Don’t Cut It No More) 楽で呑気な曲調、HipHopトラックの上にのる歌メロ。
M9
A Traveler 歌モノの名曲バラード。
M11
Brother-Speech ジャズギターサウンド&ビートが印象的なラップモノ。
M15
Love Of Life エレピのサウンドが優しくポップなLove Song。
M17
Always In Love スウィングするリズムのグルーブ感が心地良いLove Song。
M19
Spiritual People アルバムタイトル曲、いわゆるラップモノ、HipHopサウンド。
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誰かのライブに足を運んだことの無かった自分が、初めてチケットを買ってライブに行ったのもSPEECHだった。来日公演赤坂ブリッツ。バンドを携えた生音でのライブ、時に本人はギターを弾き語る。このライブスタイルでのHipHopは、当時他に無い相当新しいものだったと考えられる。
アルバムに収録されるお気に入りの曲の演奏を心待ちにする中、終盤に差し掛かり始まった「A Traveler(M9収録)」。好きな曲を生で聴けた時の喜びは、鮮明に記憶に残っている。。。
ジャンルを表すHipHopという言葉。元々「ラップ、ブレイクダンス、グラフィティー(壁画アート)」を三大要素とする「文化」を象徴するもの。黒人差別問題など社会的問題も複雑に混じり合うアメリカの背景あってこそ生まれたジャンル。だから社会に対する批判的なメッセージを込めたスタイルが主流とされていた。が!SPEECHはそこに留まらないピースフル・ライフミュージックだった。
そして、海を越えて日本に渡ってきたHipHopは、純粋に一つの音楽ジャンルとして中学生の自分の耳に届いた。言葉数の多いラップで彼らが何を唄っているか!?深くは気にしていなかったのが正直なところ。リズムが心地良くて、どこかクールで、体が揺れてしまうようなグルーブ感、バックトラックに乗る様々なジャンルのサウンド。そう、このサウンドのソウルやジャズっぽさが後に、自分にとって「ジャズへの入り口」となるのが事実である。
いつかこんなアーティストのようになりたい!と強く憧れを抱きながら、愛聴した「SPIRITUAL PEOPLE」。”ルールの無い音作り”を真似しながら曲制作に励み、8年という歳月を経て、SOFFetメジャーデビューの夢を掴んだ2003年、プロモーションで訪れた大阪のFM局でバッタリ、来日中のSPEECHに会う事になるとは、想像もしていなかった!!!自分のデビューシングル「君がいるなら☆」を本人に直接手渡しし、感激で胸高鳴る中、片言の英語で思いを伝えた!!!その音楽を示すかのように、あたたかかったSPEECH!!
改めて「SPIRITUAL PEOPLE」の音を聴くと、当時の情景が蘇ってくる。「自作の音楽でデビュー」という一つの夢に向かって夢中だったあの頃、だなぁ。なんだろう、、、家の人に伺いもせずに壁をぶち抜いて家を改造してDJブースを作ったり。クラブみたいな雰囲気にして仲間で集まって夜な夜なフリースタイルラップをして遊んだ高校時代とか。オーバーサイズのB-Boyファッションをして、ヘッドホンして音楽を聴いただけで「自分はカッコ良い」そう思えた感じ、とか。笑 そんなファッションがやがて自分らしくない!と思って等身大になっていった事とか。笑 好きな女の子とは好きな音楽を!絶対に共有していたよなぁ。。。そう、青春の恋の感じとか。
青春時代を共に過ごした音楽=「自分の人生に欠かせないCD」だ。
そして、その頃の情景や匂いまでをも思い出させ、瞬間的にタイムスリップしたような錯覚を引き起こさせてくれる。これを味わえる事が音楽の最大の魅力、今回聴き直して改めてそう思えた。
HipHopの枠でくくるには収まらない、色々な要素の詰まったあたたかく心地良いSPEECHのラップミュージックを!一度ご堪能いただきたい。
そしてSOFFetミュージックを聴けば、その存在に大きく影響を受けた理由が分かるはず。合わせてぜひ、ご堪能いただきたい!!
YoYo