CDレビュー2016年1月号『今月の1枚!』
『Tashinam』1月号の配信です。
読者の皆さま如何お過ごしでしょうか?
11月号、12月号と西内さんにレビューをお願いしました。
素敵なCD紹介でしたね。私も頑張ります。
それではCDの紹介に移らせていただきます。
今月は21世紀最重要ドラマーと言われるブライアン・ブレイドのコンテンポラリージャズの傑作CDを紹介したいと思います。
『シーズン・オブ・チェンジズ』
ブライアン・ブレイド&ザ・フェロウシップ・バンド
『Season of changes』
Brian Blade & The Fellowship Band
2007年10月10~13日、NY、
『クラブ・ハウス・スタジオ』にて録音
Track10:2007年11月26日ライヴ録音7
メンバー
ブライアン・ブレイド(ds)
マイロン・ウォルデン(as,bcl)
メルビン・バトラー(ts)
ジョン・カワード(p,org,moog)
カート・ローゼンウィンケル(g)
クリス・トーマス(b)
収録曲
01.ルビールーズ・ララバイ Rubylou’s Lullaby(Brian Blade)
02.放蕩息子の帰還 Return of the prodigal son(Jon Cowherd)
03.ストナー・ヒル Stoner hill(Brian Blade)
04.シーズン・オブ・チェンジズ Season of changes(Jon Cowherd)
05.モースト・プレシャス・ワン Most precious one(Brian Blade)
06.モースト・プレシャス・ワン(プロディジー) Most precious one(Prodigy)(Brian Blade)
07.インプロヴィゼーション Improvisation(Jon Cowherd-Myron Walden)
08.アルファ・アンド・オメガ Alpha and Omega(Brian Blade)
09.オムニ Omni(Brian Blade)
10.パトロン・セイント・オブ・ガールズ Patron saint of girls(Brian Blade)
※日本盤のみのボーナス・トラック
それではメンバー紹介、まず始めにリーダーのブライアン・ブレイドから。
ブライアン・ブレイド
Brian Blade
1970年7月25日,
ルイジアナ州シュリーヴポート生まれ。ジャズ、フュージョン、ロックドラマー、アレンジャー、コンポライザー。
幼いころはゴスペル音楽に触れて育った。
小学校に入ったころから打楽器を学び、その後ドラムを演奏するようになる。
18才から大学に通うためにニューオリンズに移住。そこでエリス・マルサリスなどの有名ミュージシャン達との交流が始まる。
92年ケニー・ギャレット・バンドに加入することで一躍有名になる。
98年リーダーバンド、ブライアン・ブレイド&ザ・フェロウシップ・バンドを結成。
00年ウェイン・ショーターのカルテットに加入。
09年ダニエル・ラノワとのロックバンド、ブラック・タブを結成。
同年チック・コリアとジョン・マクラフリンのファイブ・ピース・バンドにも加入しアジアツアーの成功とグラミー賞を獲得する。
その後、活動範囲をジャズフィールドだけにとどめず、ジョニ・ミッチェル、ボブ・ディランらロック界の大御所のレコーディングにも参加している。
現在、最も多忙なドラマーとして世界を飛び回っている。
マイロン・ウォルデン
MYRON WALDEN
ニューヨークを拠点に活動するマルチリード奏者。
このアルバムではアルトサックスとバスクラリネットを担当。
メルヴィン・バトラー
MELVIN BUTLER
テナーサックス奏者。
残念ながら詳細不明です。
ジョン・カワード
JON COWHERD
ピアニスト。
ブライアン・ブレイドのニューオリンズ大学時代の同級生。
クリス・トーマス
Chris Thomas
ベーシスト。
ブライアン・ブレイドのニューオリンズ大学時代の同級生。
カート・ローゼンウィンケル
Kurt Rosenwinkel
1970年10月28日,
ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれる。
ジャズ、フュージョンギタリスト。
バークリー音楽大学に在籍中にゲイリー・バートンのツアーメンバーとして誘われ、そのまま活動拠点をニューヨークへ移しプロとしてのキャリアをスタートさせる。
メロディーを口ずさみながらのアドリブは創造性抜群で、そのスタイルは誰にも似ていない『カート流』。
コンテンポラリージャズシーンの最強ギタリストで現代ジャズギター界の皇帝。
天才ドラマー、ブライアン・ブレイドが1998年に結成したザ・フェロウシップバンドのサードアルバム。それでは簡単に曲の紹介です。
1.ルビールーズ・ララバイ
カートのイントロで始まるブライアンのオリジナル曲。
ゆったりとしたリズムの中にアメリカの雄大な荒野をイメージさせてくれます。
2.放蕩息子の帰還
ジョン・カワードのオリジナル曲。
カートのスケールの大きなアドリブ表現となんとも言えない不思議な旋律がだんだん癖になります。メルヴィンのテナーも中期コルトレーンバンドを彷彿とさせますね。
それにしても曲名の放蕩息子とは…創作中のジョンに何があったのでしょう(笑)
3.ストナー・ヒル
テーマがしみじみと心に沁みてきます。
マイロンのバスクラリネットがいい雰囲気を醸し出しています。
4.シーズン・オブ・チェンジズ
アルバムタイトル曲でジョン・カワードのオリジナル曲
カートのギターが漂ってます。
5.モースト・プレシャス・ワン
6.モースト・プレシャス・ワン(プロディジー)
この2曲はメドレーになっています。
粘りのあるブライアンのドラムとなんとも言えないカートのアドリブが最高ですね。
7.インプロヴィゼーション
マイロンのバスクラリネットが最高に美しいです。
オルガンとバスクラリネットのハーモニーが最高です。
そのまま次の曲へとメドレーです。
8.アルファ・アンド・オメガ
オルガン+サックス+バスクラリネットのアンサンブル小曲。
見事なハーモニーを奏でています。
前の曲との組曲になっています。
9.オムニ
タイトルの通り、アルバムの最後を総括する曲。
アルバムが全体が一つの物語のような作りに仕上がっています。
10.パトロン・セイント・オブ・ガールズ(ライヴ)
日本盤のみのボーナストラックでライヴ録音。
通常ボーナストラックは全体の流れやモチーフを壊してしまうことが多いのですが、この曲は何ら違和感がありません。
コンテンポラリージャズというと難しそうとか、何を聴いていいか分からないとか言われがちですが、このアルバムを是非聴いてみて下さい。
スイングからビバップ、ハードバップそしてモードからクロスオーバー、フュージョンそしてフリージャズからコンテンポラリージャズへと、まさにジャズの歴史の集大成がここにあります。最初はよく分からない音楽に聴こえますが、何度も繰り返し聴くうちに完全にハマります。
特にカートの浮遊感漂うギターとマイロンのバスクラリネットにやられます。
コンテンポラリージャズもここまでくるとプログレとそう大差はありませんね。
複雑なコード進行と非凡なハーモニーそして奇妙なメロディー、アルバム全体が一つの組曲のように出来上がっている、そしてしみじみくるカントリー曲のコンテンポラリージャズアルバムの紹介でした。
11月号からCDレビューも担当が増員になりました。これからは新たに西内社長と隔月でお送りします。
今までより幅広い紹介ができると思います。今後も『タシナム』そしてこのコーナー『今月の一枚』をよろしくお願いいたします。
では、また来月お会いいたしましょう!
蝶道社オーナー 紺田晴久