音楽紹介 [14] 『ラン・デヴィル・ラン』 2016年 6月号

      
 こんにちは。昨今の『カバーブーム』には、いいかげん辟易している西内恵介です。
やるならここまでやれ! と、ただひたすらにカッコいい『カバーアルバム』を紹介させていただきます。


ラン・デヴィル・ラン
 ポール・マッカートニー

 『RUN DEVIL RUN
    Paul McCartney  

  1999年

 

 

メンバー

ポール・マッカートニー Paul McCartney(Vo Bass)                  

ミック・グリーン Mick Green(Guitar)
デビッド・ギルモア David Gilmour(Guitar)
イアン・ペイス Ian Paice(Drums)
ピート・ウィングフィールド Pete Wingfield(Keyboad)
デイブ・マタックス Dave Mattacks(Drums・Percussion)
ゲラント・ワトキンス Geraint Watkins(Keyboad)
クリス・ホール Chris Hall(Accordion)

 

プロデュース

クリス・トーマス Chris Thomas
ポール・マッカートニー Paul McCartney

 

収録曲

1 ブルー・ジーン・ボップ BLUE JEAN BOP(ジーン・ビンセント)
2 シー・セッド・イエー SHE SAID YEAH(ラリー・ウイリアムズ)
3 オール・シュック・アップ ALL SHOOK UP(エルビス・プレスリー)
4 ラン・デヴィル・ラン RUN DEVIL RUN(マッカートニー)
5 ノー・アザー・ベイビー NO OTHER BABY(ザ・ヴァイパーズ)
6 ロンサム・タウン LONESOME TOWN(リッキー・ネルソン)
7 トライ・ノット・トゥ・クライ TRY NOT TO CRY(マッカートニー)
8 ムービー・マグ MOVIE MAGG(カール・パーキンス)
9 ブラウン・アイド・ハンサム・マン BROWN EYED HANDSOME MAN(チャッ  ク・ベリー)
10 ワット・イット・イズ WHAT IT IS(マッカートニー)
11 コケット Coquette(ファッツ・ドミノ)
12 アイ・ガット・スタング I GOT STUNG(エルビス・プレスリー)
13 ハニー・ハッシュ HONEY HUSH(ビッグ・ジョー・ターナー)
14 シェイク・ア・ハンド SHAKE A HAND(リトル・リチャード)
15 パーティ PARTY(エルビス・プレスリー)

 

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Paul McCartney 画像元: http://goo.gl/N3plF6

 

妻「ねぇ、ここ一列、トマト植えるから、穴掘ってよ」

俺「オッケー、おりゃ! どりゃ! グキッ!」

妻「.....グキッ?」

俺「痛ててて、あーっ、腰がぁぁぁ」

妻「.....役立たず! 腰は弱い! ○○は××! △△は××!」

俺「痛てて、後半関係なくない?」

妻「男として情けない! って言ってるの!」

俺「.....」

妻「スコップ貸して! ほいっ! ほいっ! グキッ!」

俺「.....グキッ?」

妻「痛たたた、あーっ、腰がぁぁぁ」

俺「夫婦そろって何やってんだよ」

妻「痛たた、パパがぜーんぶ悪い! か弱い私に穴掘りなんかさせて!」

俺「かよわい?」

妻「.....埋めるよ」

俺「.....」

 

 

  6月10日に、ソロ活動45年を網羅するベスト盤『ピュア・マッカートニー オール・タイム・ベスト』をリリースする、ポール・マッカートニー。6月は誕生月でもあり、18日で74歳を迎えます。

 

 まぎれもない『超スーパースター』ではありますが、ビートルズ解散以降、カリスマと化して行った、ジョン・レノンとは対照的に、様々な紆余曲折と浮き沈みを経て、音楽活動を続けて来ています。

 

 その『紆余曲折』から書き始めて見たんですが、とても規定枚数に収まりません(笑)。なので、本作『RUN DEVIL RUN』に話しを絞ります。

 

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Paul & Linda McCartney 画像元: http://goo.gl/xAt2BP

 

 ショービジネス界では珍しいだろう、おしどり夫婦として有名だった、ポールとリンダ。2人が結婚したのは1969年のこと。リンダは、妻として、4人の子供の母として、ウイングスのキーボード奏者として、まさに公私ともにポールを支える存在でした。

 
 しかし、結婚から26年、1995年にリンダは乳癌を発症してしまいます。

 

 同年、手術は成功したと伝えられ、翌年にはポールが『リンダは全快した』と発言しました。ところが1997年に再発。全身への転移で、手術を断念。リンダは余生を、アリゾナの別荘で、家族と過ごし、1998年4月17日、56歳で、その生涯を閉じました。

 約30年連れ添った、最愛の伴侶を失った、ポールの胸中は、他人には測り知れません。
 リンダが残した手紙には、ポールあてに、こんな一文がありました。


 (私がいなくなっても)「あなたには、ロックンロールがある」

 

 本作は、50年代ロックンロールのカバー集です。それも、よっぽどのマニアじゃないと知らないような曲ばかり。

 R&Rのカバーというアイデアは、生前のリンダが切望したものだ、というのは、ファンにはよく知られた話しです。リンダの死後、1年の沈黙を経て、ポールが実現させたのが本作なのです。

 

 単なるカバー集じゃないことは、インナーのライナノーツ、全曲の解説まで、全てポール自身が書いていることからも伝わってきます。それに集められたメンバーときたら!

 

 ギター ミック・グリーン(ザ・パイレーツ)

 ギター デビッド・ギルモア(ピンクフロイド)

 ドラム イアン・ペイス(ディープ・パープル)

 ピアノ ピート・ウィングフィールド(フレディ・キング、アルバート・リー他)

 ドラム デイブ・マタックス(フェアポート・コンヴェンション、XTC他)※3曲のみ

 ピアノ ゲラント・ワトキンス(デイブ・エドモンズ、ニック・ロウ他)※3曲のみ

 

 ぐうの音も出ません。メンバー達は、レコーディング当日まで、何をやるのかも知らされず、

 

 ポール 「エルビスの○○(曲名)知ってる?」

 メンバー「知らないなぁ」

  ポール 「オッケー、リズムはシャッフルで、コード進行はこう.....よし、やってみよう」

 メンバー「ええっ?! もう?」

 

 こんな感じで進められたそうです。メンバーの皆様、天才のお相手ごくろうさまでした(笑)

 

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Paul McCartney 画像元:http://goo.gl/AYteh2

 

 1曲目、一聴してドラマーのクレジットを見直した人が、世界中でどれだけ居たか。イアン・ペイスって、こんなシャープなブラシプレイをこなすのか! と。2曲目は、ビートルズもカバーしていた『BAD BOY』『SLOW DOWN』などのラリー・ウィリアムズのシャウトナンバー。当時57歳のポールの衰えないシャウトぶりに鳥肌が立ちます。

 

 本作には、3曲ポール書き下ろしの新曲も含まれます。その1曲、タイトルナンバーの『RUN DEVIL  RUN』は、『ハイウェイ・スター』か! と突っ込みたくなるハードロックンロールナンバー。6曲目『LONESOME TOWN』で目頭を熱くし、しばしミドルテンポに油断していると、エルビスの『I GOT  STUNG』でダンシング(笑)。ターナー、リトル・リチャードとたたみ掛け、最後は『PARTY』で沸点を迎え、アルバムは終了します。

  

 全体の印象を決定づけているのは、やはりミック・グリーンのギター。しかし、バンドを引っ張っているのは、間違いなくポールのベースです。そして、デビッド・ギルモアがロックンロール?と、思われるかもしれませんが、ピンクフロイドでも、アグレッシブなプレイは随所に聴かれ、ミック・グリーンとも、実は相性がいいんです。安定したドラムとピアノを軸に、個性の違うギタリスト2名が、バトルというスタイルを、ポールは楽しんだのだと思います。

 

 発売年に、このメンバーで、イギリスリバプールのキャバーンクラブで、300人限定のライブも行われました。そう、ビートルズがデビューライブを行ったキャバーンです。ポールにとって本作は、再出発のためのリセットだったんだと、改めて気付かされました。ライブは当時ネットで配信もされ、YouTubeでも視聴可です。DVDも発売されています。おすすめですよ。

 

 ちなみに、今回発売されるベストアルバムには、本作からはセレクトされていません(笑)それにエルビス・コステロとの共作で、ファンにも人気の高い『フラワーズ・イン・ザ・ダート』からも、セレクトされていません。これは、近々同アルバムのアーカイブ盤(最近流行の豪華仕様盤)がリリース予定のため、あえて外したと言われています。真意はわかりませんが、こういう『せこさ』が、この人らしいなとも思えちゃう。

 悪気ないんだよね? ポール?

 

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Paul McCartney 画像元: http://goo.gl/TGbnSj

  ケイズ管理(株)西内恵介