CDレビュー11月号『今月の1枚!』
今月より「隔月」で本コラムを担当させていただくことになりました、ケイズ管理(株)西内恵介と申します。毎月紺田オーナーのセレクトする、名盤の数々を楽しみにされている方々は、何だよオマエは?とお思いでしょうが、どうかお付き合いください!
『サム・ファンタスティック・プレイス』
スクイーズ
『SOME FANTASTIC PLACE』
SQUEEZE 1993年
メンバー
グレン・ティルブルック(Vo・G)
クリス・ディフォード(Vo・G)
ポール・キャラック(Key・Vo)
キース・ウィルキンソン(B・Vo)
ピート・トーマス(Ds)
収録曲
1 エヴリシング・イン・ザ・ワールド
2 サム・ファンタスティック・プレイス
3 サード・レイル
4 ラヴィン・ユー・トゥナイト
5 イッツ・オーヴァー
6 コールド・ショルダー
7 トーク・トゥ・ヒム
8 ジョリー・カム・ホーム
9 イメージズ・オブ・ラヴィン
10 トゥルー・カラーズ
11 ピノキオ
俺「と、言うことで、タシナムの音楽紹介、担当することになったんだよ」
妻「.....はぁあ?」
俺「何だよ?はぁあ?って」
妻「パパの偏った趣味を、誰が受け入れる?」
俺「.....」
妻「こないだ車で流れてた曲!救急車のサイレンみたいなのが延々続くやつ」
俺「えーと?キングクリムゾン...かな?」
妻「クリキントンか何か知らないけど、あれ、曲なの?」
俺「.....」
妻「黙るんじゃない!パパの紹介する音楽なんか批判の元だって。やめよ!ねっ!」
俺「まぁまぁ。今月はこれで行こうかと。じゃじゃーん!スクイーズ!」
妻「.....」
俺「うん?」
妻「ねっ?.....やめよ?」
俺「.....」
1974年結成の、愛すべき英国ポップバンド、スクイーズ。ブラー、オアシスあたりが一世を風靡した90年代に「ブリットポップ」(ブリティッシュポップス)なる言い回しが流行りましたが、スクイーズこそ元祖ブリットポップバンドと言えます。
78年デビュー当初は、ニューウェイブという括りで、XTCなどと語られ、実際、ピコピコシンセでテクノ風味の曲がヒットしたりしましたが、サードアルバム「アージーバージー」(名盤!)以降は、より、ルーツミュージック寄りな(だけどひとクセある)ポップな作風を貫いています。
この「ひとクセ」にハマると、抜け出せなくなるのが、このバンドの魔力です。グレン&クリスのソングライティングチームの力量なのでしょう。メンバーは、このフロントマン2人を除き、列記するのも面倒な程(笑)、様々なミュージシャンが出入りを繰り返します。おまけに、脱退、再加入、脱退なんて具合で、バンドそのものも、解散、再結成、活動休止、期間限定再結成、などと、実に安定しない歴史を辿ります。
しかし、多くの再結成バンドが、散々たる結果に陥るのに対し、スクイ-ズは、その時代に埋もれる事のない楽曲を、むしろパワーアップして生み出し続けました。
その一つの頂点、後期スクイーズの最高傑作と言っていいのが、本作「サム・ファンタスティック・プレイス」です。
メンバーは、グレン、クリスの不動の2人に、キーボードが4thアルバム以来の出戻りポール・キャラック(ソロアーティストとしても超有名人)、ベースは、再結成メンバーのキース・ウィルキンソン、ドラムが、元エルビス・コステロ・ジ・アトラクションズのピート・トーマスという布陣。
このアルバム、共同プロデュースが、スティング「ブルータートルの夢」のピート・スミス、ミックスがボブ・クリアマウンテンということで、良くも悪くも「あの時代の音」になっております。ここは、賛否別れるでしょうが、歴代のアルバムで一番「耳なじみのいい」一枚に仕上がっています。
では、収録曲からいくつかを。
2曲目、タイトルナンバー「サム・ファンタスティック・プレイス」。
このアルバムが出る前年、グレン10代のころの元カノで、クリスの友人でもある女性が若くして白血病で亡くなりました。彼女は、クリスのバンドメンバー募集の告知に、グレンに応募しろと焚き付けた張本人で、いわばスクイーズ結成の立役者。この彼女との想い出を切々と綴り、彼女は「どこか素晴らしい場所」で新たな人生を送っている、と、実に感動的に歌い上げられます。ジャケットの水晶玉をのぞき込んだような世界に映る少女。これが「どこか素晴らしい場所」に生まれ変わった彼女なんでしょうか?
4曲目「ラヴィン・ユー・トゥナイト」は、ポール・キャラックが歌う、まるでスタンダードかと思うようなソウルナンバー。5曲目「イッツ・オーヴァー」。活動休止前の「ドミノツアー」時には、ライブのオープニングナンバーがこの曲でした。オープニングで「もうオシマイ」って(笑)
6曲目「コールド・ショルダー」。冷たい肩って何じゃ?って感じですが「そっけない態度」みたいな意味らしいです。「らしい」って、ごめんなさい。僕の英語力はその程度です。
8曲目「ジョリー・カムズ・ホーム」。夫からの抑圧された生活に堪えきれなくなった妻が、感情を爆発させて、それがきっかけで、夫婦関係が修復されて行くという歌です。染み入るメロディが素晴らしい!
実はスクイーズ、ベスト盤などを除くオリジナルとしては、17年振り(!)のニューアルバムを10月にリリースしました。「FROM THE CRADLE TO THE GRAVE」つまり、「ゆりかごから墓場まで」。同名のイギリスBBCコメディドラマのサウンドトラックという、我々日本人には、どう捉えていいのやら(笑)という代物ですが、この原稿入稿時点では、「HAPPY DAYS」という1曲のPVが公開されたのみ。これまた「いつもの」(誉め言葉です)スクイーズ節でした。
ちなみに、グレン・ティルブルックは、4年前、ギター1本で札幌琴似パトスという極小の会場にライブに来てくれました。チケット前売2,000円って、絶対ニセモノと思っていたら、本人でした!
それでは、再来月、万が一、僕以外の人が執筆していても、そっとしておいてください(笑)今後ともwebマガジン「タシナム」をよろしくお願い申し上げます。
ケイズ管理(株)西内恵介