音楽紹介 [78]『アルチザン(30周年アニバーサリーエディション)』

 こんにちは西内恵介です。11年ぶりのオリジナルアルバム「SOFTLY」が話題の山下達郎。何だか凄いメディア露出と神格化が過ぎるんじゃないかという取り上げられ方で無関係なのに(笑)ハラハラしておりましたが、そろそろ季節も「さよなら夏の日」狂騒も落ち着いて来ました。タツロー自身が「今まで作った中で1番好きなアルバムかも」と発言しちゃう1枚のご紹介です。

『アルチザン(30周年アニバーサリーエディション)』アナログ2枚組

  『ARTISAN(30th anniversary edition)ANALOG』

山下達郎

DISC1

 A面 1 アトムの子

    2 さよなら夏の日

 B面 1 ターナーの機関車

    2 片思い

    3 Tokyo’s A Lonely Town

DISC2

 A面 1 飛遊人-Human-

    2 Splender

    3 Mighty Smile(魔法の微笑み)

 B面 1 ”Queen Of Hype” Blues

    2 Endless Game

         3  Groovin’

画像出典:PRTIMES

妻「私達世代だとタツローは夏のイメージだよね」

俺「そうだな。『高気圧ガール』とか『ラブアイランド』だね」

妻「でも『クリスマスイブ』で知った人は冬のイメージなのかな」

俺「まぁ、でもTUBEとか広瀬香美みたいに極端なイメージは無いでしょ」

妻「春と秋のイメージの歌手ってなんでいないの?」

俺「なんでって.....桜の歌も山ほどあるけど春のイメージはつかないよな」

妻「これから歌手を目指す人は、そこ狙い目じゃない?」

俺「え?」

妻「今年は豊作だとか、栗拾い、落ち葉掃除が大変とか歌えば秋の歌手!」

俺「.....春は?」

妻「桜はあまりに多いから、梅にウグイス、田植え、入学式とかかな」

俺「それ、売れる歌になるのかな?」

妻「努力しだいじゃない?」

俺「.....」

 国民的◯◯って言い方をマスコミはすぐにしますが、あれなんなんですかね。国民的ロックバンドなんて言われたらすでにロックじゃねーよって思う昭和の親父なので、どうにも。

 そんな国民的クリスマスソングを歌われている国民的シンガーソングライターであられる山下達郎氏σ(^_^;)、あ、奥様も国民的.....

 でもね、僕周りにもタツロー苦手って人いますよ。「ねちっこい歌い方が」とか「そもそも良さがわからない」とか。

 そんな人達も「『クリスマスイブ』はいいけど」って言うのは、あの曲がポップソングとしてどれだけ凄いのかと言う話しなんですが、それはまたの機会に。

 ちなみに僕は『RIDE ON TIME』のカセットCMでタツローの名前を知り、アルバム『FOR YOU』で完全にハマった、ミーハーど真ん中のファンです。

 今回は、1991年にリリースされたアルバム『アルチザン』の発売30周年記念としてアナログ2枚組で昨年リリースされたリマスター盤を紹介します。

 この盤にはご本人によるライナーノーツと詳細な各曲解説があります。そもそもウィキペディアにもマニアの皆さんによる詳細な解説がアップされております。他に書くことあるのか?

 オリジナルアルバムとしては10枚目。前作『僕の中の少年』と前前作『ポケットミュージック』から顕著になってきた、「全部1人でやるからいいもん」の取り組み。

 今作の録音クレジットはどうでしょうか?リストにしてみました。

・タツロー1人 4曲

・タツロー+鍵盤職人 3曲

・タツロー+打楽器職人 1曲*

・タツロー+鍵盤職人+ホーン職人 1曲*

・タツロー+ドラム職人+ホーン職人 1曲*

・バンド形式 1曲* 

 (*は、奥様他ハモリ職人も参加)

 バンド形式1曲のみ!

 前作がタイトル曲のみ完全1人録音だったので「1人でやるもん」がかなり進行しています。

 アルバムタイトル「アルチザン」は「職人」の意味。これはタツローがアーティストと呼ばれることに違和感を抱き、自分は「音の職人」だとの思いでの命名だそうです。

 職人は1人で自分と向き合い、内なるものを形にして行くのですから、まさに職人作業で生まれたアルバムなんです。なので、ほぼほぼ1人の作業で完結しているのは必然とも言えます。そして自分の職人技だけでは完成に至らない楽曲のみ「仲間の職人」に手伝いをお願いしている。そんなイメージではないでしょうか。

 その「仲間の職人」さんの顔ぶれがもの凄い。もう長い間タツローをサポートされている面々がほとんどですが、どんな職人さん方が参加されているのか?

 興味あります?(笑)絶対「へぇー!」って思うから読んでね。(バンド及び鍵盤職人とハモリ職人の面々について書くと、とんでもない枚数になるのでここでは省略!僕セレクトの4名だけ)

1)アトムの子

●打楽器職人(パーカッション)浜口茂外也

スタジオミュージシャンの重鎮。参加作品はKinkiKidsから坂本龍一まで実に幅広い。忌野清志郎とトーサンズというユニットを組み「パパの歌」をリリースもしている。

この曲の強烈なジャングルビートはサンプリング音のシーケンスとタツロー本人が書いているので、カウンター的に入るティンバレス(もしくはロートタム?)が生演奏じゃないかな。

ちなみに氏のお父上は「バラが咲いた」「星のフラメンコ」「人生いろいろ」などの作者浜口庫之助氏。

8)Mighty  Smile

●ホーン職人(トランペット)数原晋(故人)

日本人なら100%この人の演奏聴いているはず。それだけTVの劇伴多数。例えば「必殺シリーズ」のあのトランペット!「北の国から」テーマ後半のトランペット!1980年代の「金曜ロードショー」夕景をバックに流れるオープニング曲のトランペット!「アメリカ横断ウルトラクイズ」もだよ。アニメ作品もルパンからラピュタまで多数!

●ホーン職人(サックス)ジェイク・コンセプション(故人)

吉田拓郎、松任谷由実、中島みゆき他多数の作品に参加。松田聖子『SWEET MEMORIES』もスピッツ『チェリー』もオザケン『ラブリー』も『聖母たちのララバイ』『悲しみが止まらない』『お嫁サンバ』『北の宿から』『LOVE IS OVER』もぜーんぶこの人。ちなみにFMラジオ聞く人は、「サントリー・サタデー・ウェイティングバー」のバーテンダー役!本名で出ていたんですよ。

●ホーン職人(サックス)平原まこと(故人)

歌手平原綾香のお父上。「名探偵コナン」のテーマはこの人。朝ドラ「ちゅらさん」のテーマでは、クラリネット、サックス、フルートを演奏ってウィキに書いてあった。フランク・シナトラ、ナタリー・コールなど海外アーティストとの共演も多い。年間1000曲を超えるレコーディングって恐ろしいわー。

 どうです?こんな面々がタツローをサポートしています。

 この作品オリジナルリリース時はCDしか発売されませんでした(タツロー作品では初)この2枚組の30th anniversary editionが初のアナログ盤になります。

 CD発売時、これはアナログ盤で聴きたいと、瞬間に思いました。どうして今回から無いの?って本当に疑問でした。デジタル録音ならCDの方が相性いいと思われるかもしれませんが、オープニング『アトムの子』だけでも絶対レコードが相性いいし、実際音の包容力が格段に上がっています。

 ディスク2のA面3曲が、僕的にはカタルシスを最大限感じるところ。ご本人解説によると『Splender』は、ほぼ一発録りだそうで、職人さん方の凄みを見せつけられます。全日空のCMで『飛遊人』を聴いた時、タツローってこんなのも書くんだと感嘆し、こんないい曲CMにもったいないと思ったら、しっかりアルバムに収録され二度びっくり!

 実は、どのジャンルもいわゆる○○エディション的なコレクターズ盤にはあまり興味が無く、オリジナル盤だけ持っていれば充分という方なのですが、こればかりは30年待ったかいある1枚でした。

 あ、レコードなんか聴けないと言う方もCDはぜひ一家に一枚の作品ですよ。

 ちなみに、コロナ前少なくとも15年間は一度もコンサートチケットの抽選を外したことがないというのが自慢だったのに今年は外れ(T_T) ご本人コロナ感染で札幌公演見送られましたが、なんか予感したんだよってのは負け惜しみか。

                                 ケイズ管理(株) 西内恵介