タシナムをご覧の皆さまこんにちは。
サックスの門田”JAW”晃介です。
どうも先がなかなか見通せない日々が続きますね。。
ぼくは年末からじっくりと制作環境を整え直し、3月には第一弾の楽曲と映像を作ってみたり、
5/15(土)のTenor Talkでの配信の準備をしたり、そして5/15(土)のTenor Talkでの配信の準備をしたり、7月から決まった手嶌葵さんとのステージに向けての準備をしたり、、自宅での準備の続く毎日を過ごしています。
アップした映像やライブ情報諸々はぼくのHPの方にアップしてありますので是非チェックしてみて下さい!
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さて、今回ご紹介するのはこの一年で一番聴いたアルバム、注目度急上昇中のサックスプレイヤー、Tivon Pennicottの”Spirit Garden”です。
1.Spring Storm
2.Fermented Grapes
3.Celery Juice
4.Shameless Shame
5.Galatians Five Twenty Two
6.Jump for Joy
7.Con Alma
8.Bad Apple
9.Rain Dance
10.If I May Say So Myself
11.Thank You Note
ティヴォンぺニコットはジョージア州マリエッタ育ちの現在35歳。古い楽器を巧みに使いこなす圧倒的な技術の持ち主で、それでいてそれに溺れることなく楽曲ファーストなソロの配分など、とてもバランス感覚の良い素晴らしいミュージシャンだと思います。
このアルバムは全編オーケストラバックですが、ありがちなwith Stringsという感じ一辺倒でもなく、ジャズとクラシックの響きを現代的なセンスで融合してシームレスにその両方を行き来するような楽曲構成でアルバム全編を通してひとつの物語のような作りになっています。
曲数も11曲と、それだけ聞くと長編大作かと思いきや、全体のボリュームは41分少々と一曲ずつが比較的コンパクトなユニットの集合体という感じで展開がどんどんと変わり聴いていて飽きません。
ちなみにぼくは毎日朝犬の散歩で40分〜1時間ほど歩くのですが、その時間に丁度よくハマるんですよね、、笑。昨年は本当に毎朝聴きながら散歩していました。

さてそれではアルバムの初めから一曲ずつ見ていきましょう。
1.Spring Storm
イントロダクションとなる一曲目のSpring Storm。
タイトル通り春の嵐を予感させるようなストリングスのハーモニーが十分に雰囲気を作ったところに満を持してティヴォンのソロサックスが流麗なラインで入ってきます。
アウトサイドな音をふんだんに盛り込んでいるのに難解な感じにはならないそのフレージングとエモーショナルな歌い方は一聴してジョシュアレッドマンのそれを思い出しましたが、それでいてオリジナリティーもしっかりと持っているという懐の深さをいきなり見せつけてくれます。
2.Fermented Grapes
前曲からガラリと雰囲気が変わりテナーサックスとトランペット2管のカルテット編成で16ビートの小気味よいミデアムテンポのナンバーに。ここでもティヴォンのソロはオーソドックスな音使いながら、ゆったりとしたビートの中に豊かなリズムを感じさせ、楽曲の中に溶け込むようにキメと一体化してフレーズを作るあたり、何度聴いても舌を巻いてしまいます。
カルテット編成の演奏の最後に再度ストリングスのシーンが加わり、次曲への橋渡しとなって場面転換を繋いでいきます。
ちなみにタイトルのFermented Grapesは直訳すると発酵させたブドウとなりますが、NYに同名のワインショップがあるようで、もしかしたらよく行くお店だったりするのかな?と妄想してみたり。。
3.Celery Juice
飲み物繋がり(?)でセロリジュースという、ダイレクトにイメージするとちょっと抵抗あるタイトルのついた3曲目は、アルバム中シングルカットされているアラビア風な雰囲気漂うエキゾチックなムードのナンバー。曲のメロディーラインから流れ出るようにソロへと繋がっていく展開がとても気持ち良い展開。この人なら吹こうと思えばいくらでもテクニックを披露できるであろうシーンで、ものすごく音を厳選してシンプルに、あくまで曲に必要なパーツの一部としてサラッと吹くあたりのセンスがほんと小憎いです。その後トランペットソロへと引き継がれストリングスとクロスフェードしつつまた次曲へと繋がっていきます。
4.Shameless Shame
五月雨のようなストリングスの音から突然場面転換して半音でぶつかる2管のスタッカートの4分音符でテンポが刻まれたかと思いきや、リズム隊の入ってくるタイミングはその16分音符後のタイミング、、つまり2管が刻んでいた4分音符は実は16分音符のシンコペーションで全部喰っているというちょっとトリッキーなイントロからバンドでの演奏が始まりアルバムで唯一のスインギーなジャズのシーンに。高速な4ビートはお手のものという感じでキレキレな演奏が続きラストは曲の冒頭と同じトリッキーなキメの中でドラムソロをバッチリ決めてフィニッシュ。バンドメンバーの手腕の高さを感じさせる一曲。
5.Galatians Five Twenty Two
ここでまた場面は大きく変わりストリングスをバックに従えたバラードシーンに。
古い楽器(コーンのテナー、かな、、?)の音の良さを十分に活かすためにマイクの設定などもかなり色々な工夫を凝らしているようで(一曲目のSpring Stormは録音風景の映像もリリースされている)見た限りでは楽器のベルの前に置く一般的なマイクと合わせて楽器の内部に仕込むタイプのマイク(よくライブなどで見かけるベルにつけるクリップタイプのものでもなく、本当に管体内部に入れる物があるようで!)も同時に使っているように見えます。
ラストは弦のトレモロの上で長いカデンツァが続き、最後の音は高音に向かってポルタメントで滑らかに駆け上がり、、しかしよくこんなにピッチよくこの音域で決められるなぁ、、。心底感心。
6.Jump for Joy
こちらもストリングスとバンドの一体感が気持ちの良い軽快なナンバー。
弦のイントロダクションに続いて流れるようなティヴォンのソロ〜2管のテーマへと続きエンディングでまたストリングスへとバトンを渡します。
7.Con Alma
サックスのパットを叩く音でパーカッシヴにリズムを刻み始め、それにリズム隊が徐々に絡んで、ディジーガレスピーの名曲、Con Almaへ。
Con~という表現は、イタリア語での音楽表記でよく出てくる”〜を持って”、(Conは英語で言うところのWith)という意味の言葉ですが、Almaというのはそういった音楽用語の中には無いようです。どうやらAlmaはスペイン語らしく、意味合いとしてはイタリア語のAnimaと同じような、”快活”とか”元気”とかいう意味らしいですが、、ガレスピーの曲の中ではどちらかと言うと比較的落ち着いた曲の様な。。
8.Bad Apple
古いスパイ映画のワンシーンを切り取った様なシークエンスの中に、カルテットとストリングスの複雑なフレーズの掛け合い〜サックスとトランペットのソロが組み込まれています。コンテンポラリージャズ的なメカニカルに絡み合うフレーズと、ノスタルジックなサントラの様なサウンドの織り成すミスマッチなコントラストがなんとも癖に。
9.Rain Dance
4曲目と同じ様なイントロでこちらではズバリ雨という言葉がタイトルに入っていますね。
この曲は10曲目へのイントロダクション的な位置づけで、カルテットのベーシストのソロをフィーチャーしたストリングスオンリーの曲。ラストシーンへの導入の役目を果たします。
10.If I May Say So Myself
前曲のベースソロから繋がり、一曲目のSpring Stormと同じコード進行の骨組みをモチーフにしながらもここでは完全にオーセンティックなジャズのブルージーなアプローチで、カルテット主体の演奏で曲が進みます。サックス〜トランペットとソロを受け渡したところから徐々に一曲目のストリングスのテーマへとクロスフェードして回帰していくドラマチックな構成に。
11.Thank You Note
10曲目までで一巡し完結する世界観ですが、最後に”お礼状”といった感じのタイトルで30秒ほどのストリングスの爽やかなトラックが入っているのがまたなんともオツ。
カーテンコールの様な一瞬の華やぎをもって最後を締めくくります。

さて、長い解説となってしまいましたがいかがでしたか?
ジャズの分野で培った高い技術を芯にしっかりと持ちつつも、そこに偏らず幅広く豊かな景色を魅せてくれるアルバムで、新譜では久々にハマった一枚だったのでついつい熱が入ってしまいました。。
自分も手法は違えど、このバランス感覚は見習いたいなと思います。
それでは厳しい日々が続きますが、なんとか音楽を続けていける様頑張っていますので、また配信などで観ていただけたら嬉しく思います。
皆さんも改めて体調管理に気をつけて充実した日々をお過ごし下さい!!
2021.4.25
門田”JAW”晃介