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 母国の言葉を忘れない誇り ~多言語とバリスタの関係

 

― バリスタのお仕事は長くつづけていらっしゃったのですか?

「8~9年続けました」

 

― ニュージーランドのカフェは日本と比較してどんな特徴がありますか?

「日本のカフェはちょっと高級でおしゃれなイメージがありますよね。成功した人じゃないと通えない感じ。でもニュージーランドのカフェはすごく安いんです。毎日必ずカフェで珈琲を飲む。日本でいうとコンビニみたいな感じで利用します。誰でも気軽に入れる場所」

 

― ニュージーランドから日本にいらっしゃったのはどういうきっかけがあったんですか?

「その頃、僕は働きながら大学に通って日本語を専攻していました。大学の交換留学生に応募したんですが、その時の成績があまり良くなかった。本来僕は、日本に来られなかったはずなんですが、その年、東日本大震災があって、留学をキャンセルした学生がたくさんいました。僕はそれでも日本へ来たかったから、キャンセルした学生の代わりに留学させてもらいました」

 

― 当時、世界各地で震災の様子が報道されていましたね。それでも日本へ来たかった。なぜですか?

「ニュージーランドで未来が見えなかったから。ずっとバリスタとして働いていても、貯金もない。どこか変わらないとそのまま40歳、50歳、60歳になって、死ぬ。それはなんか悔しいなと思って。原発の問題や、余震の問題。その時の円のレートも高くて、ずいぶん反対されましたけど、それでも来たんです」

 

― なぜ、日本語の勉強をはじめたんですか?

「自分のものの見方が主観的すぎると思って。もっと客観的に世界を見てみたかったんです。例えば、カフェについて。他の国の人がどう見ているのか、どんな印象をもっているのか。その違いが知りたかったんです。言語に関しては、何をすればいいのかわからなかったので、話せる言葉を増やしていけばいいと思いました。そうすれば、翻訳でも通訳でも仕事ができるし」

 

― ニュージーランドでは、日本語を勉強する人は多いんですか?

「多いですね。義務教育の選択言語として日本語を勉強しています。僕は高校で日本語を選択して、大学で専攻しました。実は、最初は経済を専攻していたんです。でも留年しちゃって(笑) 他の科を選んでください。と言われたので、日本語の勉強を再開しました」

 

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― 高校時代に日本語を選択したのは、日本に関心があったからですか?

「日本と言えば、アニメ、ゲーム、ドラマが有名です。でも僕はそういう方面にあまり興味が無かった。だから、日本語を勉強するのはすごく大変でした(笑)」

 

― では、どうして日本語を選んだのですか?

「英語が話せても日本では仕事が出来ないから。日本の仕事は日本語が話せないと出来ない。そこに日本語を勉強する価値があると思いました。僕は最初からニュージーランドで働く気はなくて、いずれ台湾に帰ろうと思っていました。日本語ができれば、何か仕事があると思ったんです」

 

― 学校での成績はあまりよくなかったと伺いましたが、どうやって日本語を勉強したんですか?

「日本に留学することができました。学校の成績が悪いのは自分の問題。ただ、留学生は学校の代表として日本に来ていますから責任があります。留学生として青森に来てからは、居酒屋へ通って毎晩、お客さんと飲みながら話しました。話すことは好きだから、少しずつ日本語ができるようになったんです。行動してみて、自分は『出来ない』のじゃなくて、『やってない』のだと気が付きました」

 

― お家の中では、ご両親と何語でお話していますか?

「主に台湾語です。中国語が少しと、父は英語も話します」

 

― 多言語を使って生活なさってきたんですね。

「台湾を離れてニュージーランドで暮らし始めてから、だんだん僕の台湾語のアクセントがおかしくなってきたんです。父がそれを見て『自分たちの母国語だから、台湾語を忘れちゃいけない』ということで、家の中ではずっと台湾語を使ってきました。台湾語、中国語、英語、今は日本語を含めて、僕の中でぐちゃぐちゃになっていて、翻訳や通訳の仕事をするときは、意識しないのに違う言葉が出てきちゃうんです(笑)」

 

― そうでしょうね。母国語にない言葉でも、外国語でぴったり言い表せる言葉があるでしょうから。

「移民した人の中には、母国語を忘れてしまう人も居るから、自分の母国語を忘れずに、新しい言葉や文化を勉強していけるのを誇りに思います。自分本来の言葉も守りながら、新しい言葉で他国の人と話が出来て、色々なことを教えてもらえるのは、とても面白いことだと思います」

 

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