こんにちは、西内恵介です。ザ・ビートルズ現役時代のラストアルバム『レット・イット・ビー』。アルバム全てを聴いてなくとも「タイトル曲」を知らない人は、ほぼ皆無だと思います。
そんな超有名曲を、冠に持つアルバムなのに、どうも評価は今一つ。特にビートルマニアが本作に冷たいんですよ。今回はフィル・スペクター追悼と、今夏公開の映画『ゲット・バック』をからめて本アルバムを「正しく」聴いてみましょう。

『レット・イット・ビー 』ザ・ビートルズ 1970年
『LET・IT・BE 』THE BEATLES
メンバー
ジョン・レノン(Vo Guitar)、ポール・マッカートニー(Vo Bass Guitar Piano)、ジョージ・ハリスン(Vo Guitar)、リンゴ・スター(Drums)
ビリー・ブレストン(Hammond Rhodes)
プロデュース フィル・スペクター
A面
1 トゥ・オブ・アス
2 ディグ・ア・ポニー
3 アクロス・ザ・ユニバース
4 アイ・ミー・マイン
5 ディグ・イット
6 レット・イット・ビー
7 マギー・メイ
B面
1 アイヴ・ガッタ・フィーリング
2 ワン・アフター・909
3 ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード
4 フォー・ユー・ブルー
5 ゲット・バック

The Beatles 画像元: https://bit.ly/2MesesC
俺「これ、フェルナンド・ユエルゴ・ビッグ・バンドて言うのよ。よくね?」
妻「へぇ、珍しいねジャズ聴いてるの」
俺「ほら、もういい歳だし、大人の....」
妻「無理!無理!無理!ジャズって顔じゃないし」
俺「顔関係ないだろ」
妻「まぁ、パパの場合ロックって顔でもないけどね」
俺「....いいんだよそれは、で、このバンド、ドラムが日本人なのさ」
妻「へぇー」
俺「それも函館出身で、若干23歳!上手いわー」
妻「へぇー、札幌出身の54歳は何やってるんだか」
俺「....いいんだよそれは」
妻「よしよし」
俺「吉村玄くんって、これからも注目だな」
妻「18歳で単身バークリーってYoYoさんみたい!」
俺「ね、函館から、本場アメリカ東海岸で活動中って凄いよな」
妻「あ!函館バカにしてるしょ!GRAYだってジュディマリだって函館だよ」
俺「.....確かに。バークリー繋がりで、YoYoさんと一緒にやったりしないかな?」
妻「ね、ジャズ界狭いから、わからないよ?」

The Beatles 画像元: https://bit.ly/2Mj0HpR
本アルバムリリースまでの紆余曲折を、まず、おさらいしましょう。ビートルズファンには、とてもよく知られた話しですが、お付き合いください。
1969年1月、前年末に『ホワイト・アルバム』をリリース後のビートルズは、正直煮詰まっており、メンバー間も、非常にぎくしゃくしていました。
そこでポールは「原点に戻って(ゲット・バック)レコーディングの「マジック」に頼らず、シンプルに「せーの」でセッションして新曲を作ろう」と提案。
そして、その制作過程をカメラに収めて、TVドキュメンタリー(結局は映画化)にして、そのサウンドトラックとして、作った新曲をアルバムにしようと。
これがいわゆる「ゲット・バック・セッション」の背景です。
セッションは1月丸々行われ、膨大なテープとフィルムが残されました。
その最後が、有名な「ルーフ・トップ・コンサート」(レコード会社屋上でゲリラ的に行われた、ビートルズのラストライブ)です。TV番組の最後を飾る映像として、実現しました。
が、結果的に、出来は今一つ。
アルバムは、エンジニアのグリン・ジョーンズが、何とかまとめ、「初心に帰ったよ」の意味で、デビューアルバムと同じ構図のジャケット(後に「青盤」のジャケットに採用)も撮影。タイトルを『ゲット・バック(レット・イット・ビー)』としてリリースかと思ったら..。
「何かやっぱ、これダサくない?」 と、メンバーが異を唱え、なんと没に!
そして、「やっぱり、ジョージ・マーティン(デビュー作からのプロデューサー)がいないとダメなんだ」と、心機一転、アルバム『アビイ・ロード』のレコーディングに入ります。
同年9月に『アビイ・ロード』はリリース。まさに追い込まれた上での、奇跡といえる大名作が完成したのですが、バンド自体は、もはや、修復不能なほどバラバラに。
それでも、年末から、年明けて1970年1月に、数曲を手直しレコーディング。
グリン・ジョーンズが再度アルバム『ゲット・バック』として編集。
と! こ! ろ! が! (笑)
またもや、メンバーが「やっぱりダメだよこれ」と、没に!
け! れ! ど! も! (^^;)

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契約上、ビートルズとしてもう1枚はリリースしなければならず、もちろん、また集まって新曲をなんて気持ち、誰一人無く。(それぞれソロ活動をスタートさせていました)
ジョンとジョージが「これ(ゲット・バック・セッション)、他のプロデューサーにやらせてみるか?」と、フィル・スペクター(2021.1.16没 合掌)に丸投げ。
そこは奇才、フィル・スペクター、「それなり」の形のものを制作。
ポール以外のメンバーは「おー!いい出来じゃん!これで行こうぜ」と。ポールだけは「なんだよこれ、メロドラマみたいなオーケストラ入れやがって、こんなもん発売中止だ中止!」
しかしポールの訴えむなしく、アルバム『レット・イット・ビー』は、ビートルズのラストアルバムとして、1970年5月にリリースされたわけです。(映画も公開)
このアルバムの評価が分かれるのは、こんな経緯も関係します。ポールから発売中止を求められたアルバムなんて!
昨年、2020年は、アルバム『レット・イット・ビー』発売から50周年の節目の年。それに合わせて映画『レット・イット・ビー』のリメイクと言える、映画『ゲット・バック』が公開される予定でした。
ところが、コロナ禍の影響を受け、編集作業が大幅に遅延。公開は今年の夏に延期されます。その延期発表の際、監督のピーター・ジャクソン(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ)は「映像の一部を」公表しました。
オリジナル映画『レット・イット・ビー』は、殺伐とした空気の中、険悪なポールとジョージ、ヨーコべったりのジョン、間延びしたリハーサル、一人空回りするポール、こんな映像が永遠と続き、「ルーフ・トップ・コンサート」で、バンドが最後の輝きを放つという映画でした。
ところが、未発表の映像を5分程つなぎあわせた、今回公表された映像は、特にジョンは、何だか和気あいあいと、めちゃ楽しそうに、このセッションに参加しているではないですか!
何よこれ?これまで言われてたのと違うじゃん?
映像を見た、世界中のビートルズファンは思ったはずです。
でも、実際、程なくビートルズは解散しちゃうんですから、オリジナル『レット・イット・ビー』の視点が正しいのかもしれません。ビートル大好きな、ピーター・ジャクソンが、最愛のグループの最後を「自分の理想」の「おとぎ話」として、創作しているのかもしれません。
けど、どうせなら楽しい映画が見たい!エンターテイメントの裏側なんて、見せなくていい。こてこてに、コーティングされたものくらいが、特に今の時代には、ちょうどいいと思いません?
だって、『レット・イット・ビー』だって、フィル・スペクターが、こてこてにコーティングしたんですも。ピーター・ジャクソンだって、やりかねませんよ(笑)
でも、このアルバム、改めて聴いてみたら、こてこてのコーティングって、『ロング・アンド・ワインディング・ロード』だけなんですよね。
『アイ・ミー・マイン』と『アクロス・ザ・ユニバース』の2曲も、オーケストレーションされていますけど、2曲とも、本当に絶妙なアレンジで。ジョージもジョンも文句無いはずです。
他は、むしろ、もうちょいいじれば?って程に、「素」のまんま仕上げている。
アレンジ面もそうなんですが、フィル・スペクターってやっぱりただ者じゃないな、って思ったのが「選曲」と「曲順」です。
LPレコードで聴いた時、このアルバムって「A面とB面が逆」の方が、しっくり来るって、思った方いらっしゃいませんか?

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僕はそう思いました。こんな具合です。
『アイヴ・ガッタ・フィーリング』って、まさにアルバムのオープニングの1曲!そして『ワン・アフター・909』につなぎ、ロックンロールで盛り上げて、『曲り道くねくね』のバラードをはさみ、ジョージのブルースから、A面最後は『ゲット・バック』でタイトに終わる。
B面は、アコースティックな『トゥー・オブ・アス』で始まり、『ディグ・ア・ポニー』『宇宙の彼方』『アイ・ミー・マイン』と名曲を3連発。『ディグ・イット』で、ちゃかして、泣く子も黙る『レット・イット・ビー』で、終われば綺麗なのに、最後また『マギー・メイ』でちゃかす。
どうですか?この方がしっくりきませんか?
というか、これだけのことで、グッと「ビートルズらしく」なりますよね。不思議に。
実際、没になったグリン・ジョーンズ盤は、『ワン・アフター・909』から始まる、これに近い構成でして。普通に考えれば、A面とB面、逆にしてしまうと思うんです。
そこを、まさかの『トゥー・オブ・アス』始まりにする、フィル・スペクターのセンス。
後の『ジョンの魂』のプロデュースにしても、やっぱり一種天才なのは間違い無いんでしょう。
殺人犯でヤク中ですけど(^^;) (フィル・スペクターについては「音楽紹介8」をどうぞ)
のちに、ポール主導で、『レット・イット・ビー・ネイキッド』って、オーケストレーションなど入らないバージョンがリリース(ポールって大人げないことするのよね)されましたけど。
ポール贔屓の人ごめんなさい、あれ「プロが整えた」デモテープっすよね。
僕には「作品」に聴こえなかった(>_<)
作品の伝え方としてのプロデュースって大事なんだな、と、つくづく思いました。
『レット・イット・ビー』が、なぜ他のビートルズのアルバムと「違って」聴こえるのか?つまり身も蓋もないですが、曲のクオリティとか、制作背景とか、そういうことじゃなくて「プロデューサーが違うから」ってだけの話し。
つまんない結論(笑)けど、まぎれもない事実。
曲のクオリティなんか凄いよ。どの曲もさすがです。『ドント・レット・ミー・ダウン』を外しても、これだけ粒が揃った曲ばかりって!
最後に楽しい妄想を。『レット・イット・ビー』と『アビイ・ロード』2枚組で1作品としてリリースするとしたら、あなたなら、どういう曲順で、制作しますか?
または、この2枚からの選曲で1枚のアルバムを作るとしたら?
可能性としては、あったわけじゃないですか?
『サージェント・ペパー』を超える、最強のアルバムができるかも?(笑)
マニアックな妄想!楽しいよ!マニアの皆さんは、ぜひぜひお試しを
※追伸 ジュリー・テイモア監督の映画『アクロス・ザ・ユニバース』未見のビートルファンの方、もったいないよ。ぜひご覧あれ!(この映画教えてくれたPEARL BAR 木村さん!感謝!)
ケイズ管理株式会社 西内恵介