横浜シネマリン 支配人  八幡温子 インタビュー

 気鋭の個人制作映画から古い名作まで。上映作品は自分の目と足で選ぶ!

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― 上映作品についてお聞かせください。どのようにして作品を選んでいらっしゃいますか?

八幡「今は、西村さんに番組編成をお願いしているんですけど、私も、こんなのやりたいという意見を言って、選んでもらったりしてます。劇場オープンの前から配給会社さんにもあちこち御挨拶に伺ったんです。そのつながりもあって毎月大量に試写状をいただくので、試写会にまめに足を運んで作品を選んでいます」

 

― 毎月、どれくらい試写に行かれているのですか?

八幡:最近、ようやく試写に行けるようになりました。オープン前は準備で忙しくて。でも、試写を見て、配給会社さんに「この映画お願いしたいんですけど」と言っても、「いや、ジャック&ベティさんに決まってるんですよ」と言われて、なかなか出してもらえないのが現状です」

 

― 人気のミニシアターがあるんですね!その劇場と差別化していかなくてはなりませんね。

八幡「そうなんです。女性オーナーの劇場ということで、女性の生き方を描いた作品を特集するとか、女性監督にスポットを当てるとか、これから、横浜シネマリンの特色を出していきたいと思います」

 

― シネマリンで上映される作品は、八幡さんが全部ご覧になったものですか?

八幡「まだ全部見れていないものもあります。上映が始まる迄には試写に行って見てこなくちゃ、と思っています。私が観た作品を上映することもあるし、西村さんと一緒に試写へ行って、これいいね、って上映する作品もあります」

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2014年12月にリニューアルオープンした『横浜シネマリン』  女性オーナーならではの明るくて清潔感あるロビー

 

― 自主制作や制作委員会側で映画を作っている人たちから、上映して欲しいという申し入れはありますか?

八幡「大きい規模の制作委員会とか、そういうところからは無いですね。小規模で、作品を作ったはいいけれど、なかなか広がっていかないので、夜の時間帯でもいいのでかけてください、と持ち込まれる作品は結構あります。今日も持ち込みがありました。若い方が作った映画で関西方面では結構ロングランで上映されてたみたいです。その映画に関わっている方が映画美学校の講師でもあって、そのつながりで「八幡さんのところでやってくれない?」って連絡があって」

 

― 自主制作映画の敷居が低くなってきて、持ち込みの件数も増えていると思いますが、本来、そういった作品は配給会社に持ち込むべきなのか、劇場に持ち込むべきなのか、どちらが良いのか教えていただけますか?

八幡「配給会社さんに持ち込んで、じゃあ、うちでやりましょう!となれば、宣伝、チラシ作成、ウェブで展開、広告戦略もふくめて全部やってくれると思うんですよ。広報担当者さんを付けてやっていくことになるので、例えばオープニングの試写会ではこのゲストなら来てくれる、とか話題になるゲストの人を紹介してくれたりするでしょうね。そういう展開ではなくて、あくまで自分達でやっていこうとするなら、一軒一軒、映画館をまわられるのもいいと思います」

 

― 配給会社との契約による制限などもあるでしょうから、その条件と自分達の方針に合わせて選べばよいのですね。シネマリンでは自主映画の上映というのは企画されたことはありますか?

八幡「今(2015年2月)上映している、松井久子監督の『何を怖れる』という映画ですが、これは彼女がひとりでやっているような小さい組織での配給なんです。私の方から「やらせてください」ってお願いしたら、劇場公開は予定していなかったけど、やってみようかな、と言ってくださって、横浜での上映はシネマリンに決まったんです」

 

― 八幡さんの方からお願いして公開が決まったんですね。

八幡「2014年のあいち国際女性映画祭で作品を拝見して、これ是非うちでやりたいな、と思ってご連絡して、上映させてもらう運びになりました」

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― 持込があったり、劇場からお声掛けなさったり、双方向なんですね。

八幡「そうですね。面白いと思ったら、連絡先を調べて、ダメもとでどんどん電話する。そうしてます」

 

― 八幡さんは、そこもやっぱりアグレッシヴに動かれる方なんですね。

八幡「そうしないと取っていけないですからね(笑)。おかげさまでここでしか観られない映画が上映できて、それを目指してお客さまが来てくれています」

 

― 上映作品のレンタル料金について教えていただけますか?

八幡「興行収入の分配、昔は配給会社7、劇場3とかっていう無茶苦茶な時代もあったみたいですが、最近は折半が主流です。大きい作品や配給会社だと、配給会社が6で劇場が4という場合もあります。ロードショー作品で分配の取り決めをしない場合は、最終的な動員をみて交渉します。「お客さんが入らなかったんだよね。ちょっとそっちで泣いてくれない?」って感じでしょうか。そこらへんが番組編成をしている人の力量。私みたいに駆け出しだと値段の交渉が上手くできないんですけど(笑)。古い作品だと、最初からレンタル料5万円プラス消費税でお願いします、という場合もあります。ある監督の新作をロードショーで上映して、夜の時間に旧作の特集上映を組んでやる、っていうような場合ですね」

 

― 状況によって流動的なんですね。

八幡「ロードショーっていうのは、基本的に配給さんが宣伝まで責任を持つということになっていて、劇場もあんぐり口を開けて待っているだけではないんですが、配給さんが広告を出したりして、責任を持つということになっていますから、人が入ると、それだけうちもお金をかけて宣伝をして結果が出たんだから、6頂戴、って言われたり、ここらへんは駆け引きで値段が決まっていきます」

 

― ロードショーではない古い映画のフィルムはどうやってお探しになるんですか?

八幡「タイトルが決まったら、そのフィルムを持っているところを探します。古い映画ならフランス映画社さん(2014年8月倒産)が持ってそう、とか、アテネフランセさんかな?とか。キネマ旬報さんも古い作品を集めていらっしゃいますね」

 

― そうやって当たりをつけてご連絡されるんですね。

八幡「そう。それで電話してみると「あー、うちにはないけど、あそこなら持ってるんじゃない?」って教えてくれたりもするんですよ。フィルムセンターに聞いてもいいと思います。でも、フィルムを見つけても版権が切れていて、日本での上映が出来なくなっている作品もあります。そうなっちゃうと上映は難しいですね」

 

― 古い映画の需要というのは、結構あるんでしょうか?

八幡「今、横浜に28席しかない旧作専門の劇場があるんですよ。『シネマノヴェチェント』という劇場で、ゲストもたくさんお呼びして色々やっているみたいです。飲食店が併設されていて、そこでお酒も楽しめるんです」

 

― お酒と一緒にレトロな映画が楽しめる。映画の楽しみ方も色々バリエーションが増えているんですね。

八幡「それでも総体的に映画館で映画を観る人が少なくなって、うちの映画館もシニア層がメインなんですよね。今は団塊の世代の方が来てくださるからいいのですが、この先、映画館ってどうなっちゃうんだろう、って」

 

― 今は映画上映だけでは人が入らないので、ゲストトークを入れる場合が増えているようですね。

八幡「今日も午前中、特撮関係の方にお会いしたんですけど、映画だけだとやっぱり厳しいって仰ってました。今のメインはヒーローショーなんですって。グッズが飛ぶように売れるからって(笑)。それはそれで、必要ならば割り切ってやるしかないですよね。ただ、メインの仕事は譲らないでやって行きたいです」

 

― 八幡さんのその姿勢に、映画ファンは共感して応援してくださると思います。どうか末永く、横浜シネマリンを守り、横浜の映画館を盛り上げてください。今日はありがとうございました。

八幡「ありがとうございます」

 

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八幡 温子 (やわた あつこ)
横浜シネマリンオーナー・支配人 横浜出身 

 映画サークル「横浜キネマ倶楽部」事務局長
を経て、横浜の老舗映画館「横浜シネマリン」
オーナー・支配人となる。2014年12月12日、
再建リニューアルオープンを果たした同劇場は、
女性オーナーの劇場らしい、明るく快適な空間
として生まれ変わった。穏やかな語り口の中に
明確な意思と情熱を持つ、注目の女性支配人。

 横浜シネマリン

神奈川県横浜市中区長者町6-95 [地図]
TEL : 045-341-3180

公式サイト:http://cinemarine.co.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/ycinemarine

  (取材:2015年 2月)

 

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