『フォトグラファーchinoの写真館』【23】氷都

『フォトグラファーchinoの写真館』の第23回は『氷都』がテーマです。お愉しみください。

 寒さも厳しくなり、すっかり冬景色の北海道を満喫すべく、凍った湖を見に湖畔散策へ出掛けた。
 そもそも非常に寒さに弱く、冬に出歩くことが苦手な質なので、あまり凍った湖など見に行ったことはないのだが、そこは写真の題材と思えばなんなく足が向いてしまう。
 湖畔の駐車場へ車を停め、少々歩いたらあっという間に景色が変わる。
 夕暮れ時のせいか、そもそも人の気ない場所なのか、しんとした湖畔は冬の効果もあってか澄んで、時間までも凍ったような景色が広がっていた。
 霜の張ったさくさくとした砂浜の上に、どっかりと座り込んで、光を夢中で写す。時折、轟音と共に頭上を飛行機が飛ぶが撮影の間は不思議なことにその音が気にならないのだ。
 その場にいたのは精々四半時だというのに、自然の雄大さと静けさは心まで澄み渡りここ最近の嫌なことなど忘れてしまう。無論、忘れては行けないことの方が大半なのだが、せめてなにも考えないで良い時間が持てるのは貴重だ。
 生きていれば嫌なことも多い。年末の少しの時間、今年のいやなことを雄大な自然の風景で忘れて欲しい。

 余談。普段よく野鳥が見られるので、本当は野鳥を撮りに行ったのだが、まったくもって一匹も見当たらず、車へ帰り、カメラを仕舞ったところで、大きな声と共に届きそうなくらい近くを大きな白鳥が編隊を組んで飛んできて、いままでいた方向へと消えていった。人生そんなものである。
 そして、車を発進させたところで、立派な角の牡鹿に遭遇した上に、その先にかわいい猫までいて、カメラがない時に限って、良さそうな被写体を見つける。そういうものなのである。人生は。

結氷

玲龍

一片氷心

深淵

氷花

愛日

冬茜

結氷湖