先月、突然の訃報が飛び込んできました。
元EL&Pのキーボーディストのキース・エマーソンが3/10に死去したということです。
なんと死因は拳銃自殺。右手の神経にダメージがあって演奏に影響が出ていたことや、心臓病やアルコール中毒などによって鬱状態だった等々、多くの悩みを抱えていたようです。
天才ゆえに納得のできる演奏ができなくなったことで、心身に歪みが出ていたのかもしれません。
今月はそんな天才、故キース・エマーソンの演奏が堪能できる、プログレッシブロックの傑作でEL&Pの代表作『Brain Salad Surgery』をご紹介いたします。
エマーソン・レイク・アンド・パーマー
Emerson Lake & Palmer
1973年録音/Produced by Greg Lake
メンバー
キース・エマーソン(key)
グレッグ・レイク(el-b,el-g,vo)
カール・パーマー(ds)
収録曲
1.聖地エルサレム
2.トッカータ
3.スティル…ユー・ターン・ミー・オン
4.用心棒ベニー
5.悪の教典#9 第1印象パート1
6.悪の教典#9 第1印象パート2
7.悪の教典#9 第2印象
8.悪の教典#9 第3印象
まずはバンドとメンバーの紹介から始めたいと思います。
Emerson, Lake & Palmer (EL&P)
1970年に結成されたイギリスのプログレッシブ・ロックバンド。
『ザ・ナイス』のリーダー、キース・エマーソン、『キング・クリムゾン』のベース、ボーカル担当のグレッグ・レイク、『アトミック・ルースター』のドラマー、カール・パーマーの3人が意気投合して結成した。
3人ともに結成以前から既に名声を得ていたので『スーパーグループ』と呼ばれる。
『キング・クリムゾン』『イエス』『ピンク・フロイド』『EL&P』で、プログレ四天王と呼ばれることもある。
シンセサイザーの導入や、クラシック音楽とロックの融合によって、プログレロックバンドとして揺るぎない地位を築いた。1980年2月解散。
キース・エマーソン (1944年11月2日~2016年3月10日)
イギリス、ヨークシャー州トッドモーデン出身のキーボーディスト、作曲家。
ジャズ、クラシック、ロックを融合させた、シンセサイザー楽曲の先駆者。
EL&P解散後は『キース・エマーソン・バンド』を結成。その後ソロ活動。
グレッグ・レイク (1947年11月10日~)
イギリス、ドーセット州プール出身のボーカリスト、ベーシスト、ギタリスト、作曲家。
『キング・クリムゾン』のデビューアルバム『クリムゾンキングの宮殿』ではベースとボ
ーカルを担当、セカンドアルバム『ポセイドンのめざめ』ではギターを担当した。
『EL&P』解散後はソロ活動、1983年には『エイジア』に参加してカール・パーマーと
合流した。
カール・パーマー (1950年3月20日~)
イギリス、バーミンガム出身のドラマー、12歳からドラムを始めた。
1967年、アルバート・リーの『サンダーバーズ』に加入、1969年、ニック・グラハムと
『アトミック・ルースター』結成、 『EL&P』解散後は『エイジア』に参加、その後は
『カール・パーマー・バンド』で活動。
それではアルバムと曲の紹介。
このアルバムはスタジオ録音としては4作目で、EL&P主宰の自社レーベル『マンティコア・レーベル』としてのデビューアルバム。
アルバム名『Brain Salad Surgery』はスラングでエロティックな意味があるのですが、ここでは細かく説明はしません。アルバムジャケットにもそれらしきものが描かれていたり、国によっては消されていたり…ですね。
ジャケットデザインは映画『エイリアン』で有名なスイス人画家のH・R・ギーガー。それにしても邦題の『恐怖の頭脳改革』は、何とかならなかったのでしょうか? センスなさ過ぎです。
1.聖地エルサレム
イギリスの賛美歌『エルサレム』をアレンジしたナンバー。
グレッグの伸びやかな声が、キースのシンセサイザーと絡み合ってオープニング
を飾るにふさわしい曲に仕上がっています。
2.トッカータ
アルゼンチンのクラシック作曲家、アルベルト・ヒナステラの『ピアノ協奏曲第1番第4楽章』をアレンジ。キースのシンセサイザーが縦横無尽に馳け廻るインスト曲。
3.スティル…ユー・ターン・ミー・オン
グレッグ・レイクの神々しい歌声、前曲の攻撃的な構成から暫し安らぎを与えてくれる曲。 グレッグがアコギを弾いているので、キースがシンセサイザーでベースを弾くというようなことをしています。
4.用心棒ベニー
ウエスタン調の曲。クレジットではボーカルがキースとなっていますが、歌っているのはグレッグです。グレッグにしては珍しくダミ声で絶叫しています。
5.悪の教典#9 第1印象パート1
ここからがEL&Pの本領発揮、ラストまでの約30分間はまさに圧巻の演奏です。
トリオで演奏しているとは思えないほどの音の厚みを感じさせてくれます。
この曲からはプログレお得意の組曲になっていて、3部構成組曲になっています。
6.悪の教典#9 第1印象パート2
この曲はLP時代のB面1曲目にあたります。だからなのか、曲の入りが前曲の終わりと微妙に重なっています。A面からB面への流れを考えてのことだったのでしょうか?
パート1とパート2で1曲です。
7.悪の教典#9 第2印象
キースのピアノが超絶。クラシカルな要素に攻撃性が加わった、アルバムのベストバウト
8.悪の教典#9 第3印象
ラストを締めくくる雄大なシンセサイザー楽曲。途中に出てくるフレーズが『宇宙戦艦ヤマト』に聞こえるのが個人的には嬉しいです(笑)
最近、1970年代に活躍した偉大なミュージシャンが相次いで亡くなっています。
青春時代によく聴いたアルバムを聴き返しながら、寂しい気持ちで一杯になります。
それと同時に70年代ロックのカッコよさを再認識させられます。
キース・エマーソンは、今年の1月10日に亡くなったデビッド・ボウイとは家族付き合いするほど仲が良かったようです。今頃、二人揃って天国でセッションでもしているのかもしれません。
そんなことを想像しながら合掌。
蝶道社オーナー
紺田 晴久