音楽紹介 [69] 『Metamorfosa』

タシナム運営の藤野です。皆さん、いかがお過ごしでしょうか。今回はどんなサウンドをご紹介するべきか迷いに迷った結果、日本にとって身近な外国でもあるインドネシアの才能溢れるアーティストの一枚を選びました。

インドネシアには、ジャパニーズフュージョンに近い音楽を演奏しているミュージシャンが多くいます。日本のフュージョンファンにしてみると、懐かしいと思えるサウンドがたくさんあるのです。そして、テクニカルなプレイが特徴のミュージシャンが多いのも特徴で、時々見かける楽器キッズの動画なんて、サプライズの連続になることも多々あります。

今回ご紹介する『Nathania Jualim(ナサーニア・ジュリアム)』という女性ギタリストも若く才能豊かなアーティストの一人。ギタリストとしてのテクニックだけではなく、作曲センス、ボーカルまで、いつも驚かせてくれます。そんな彼女の代表曲『Dream On』が入ったアルバム『Metamorfosa』をご紹介しましょう。 

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Metamorfosa 』
Nathania Jualim(2019年) 

Nathania Jualimとは

Nathania Jualim(ナサーニア・ジュリアム)は、インドネシアのバンドンで1995年に生まれました。9歳からピアノ、ドラム、ギターなどのレッスンを受けるなど、小さい頃から充実した音楽教育を受けていた彼女は、高校卒業後に音大に進学し、ジャズ・ポップスのギターを専攻します。そして、インドネシアの音楽フェスなどで受賞を重ねたのです。彼女の足跡はインドネシアの音楽シーンにしっかりと刻み込まれたのでした。

参考:ディバイザーオフィシャルサイト

Nathaniaの魅力とは

Nathania Jualim(ナサーニア・ジュリアム)を語るときに外せないのがアコースティックギターによる演奏です。彼女はハーモニーを大切にするギタリスト。エレキギターによる演奏でもそれを感じられますが、アコースティックギターによる深い響きは、その世界観をより魅力的なものに仕上げていると言えるでしょう。彼女の音楽を楽しむなら、アコースティックギターによるハーモニーを重視した演奏、エレキギターによるバリバリにフュージョンしてるリードギター。そして、ボーカル。この3点を押さえるべきです。

収録曲紹介

1.(T)His Way

イントロにふさわしい美しいコードストロークが魅力の曲。ディバイザーの音色を楽しみたい人にとっても、ふさわしい楽曲と言えるでしょう。

2.The Home That Built Me

パーカッシブなプレイを魅せるソロギター。テクニックはもちろん、ここでもハーモニーの心地よさを味わえます。

3.Hope 

この曲もアコースティックで聴かせます。ストロークの中で雄大に響くメロディが気持ち良い一曲です。

4.Menatap Matahari

ここにきていよいよボーカルが聴けます。ボーカリストとしての彼女を言うなら『ちょうどよく、心地よい』と私は言ってしまいます。透明すぎるわけでもなく、力強すぎるわけでもない。そして、その歌声がさわやかに広がるサウンドの中で、ひたすら心地よく生きるのです。

5.Dream On

彼女のエレキギターのテクニックを堪能できる曲であり、キャッチーなメロディが印象的なナンバーです。このアルバムでは唯一のディストーションサウンドを聴けます。ギターソロではアコースティックギターも使い、彼女の魅力を存分に堪能できる代表作です。

Nathaniaと日本

Nathaniaは、日本のギターブランド「Bacchus Guitars」と「Headway」のエンドーサーです。個人的には、Nathaniaというとピンク色のジャズマスタータイプのギター(Bacchus BJM)という印象でしたが、最近はSAKURAというテレキャスタータイプの新しいギターも使用しています。

Bacchus Guitarsと言えば、長野県松本市に拠点を構える株式会社ディバイザーのギター・ベースブランド。初心者向けからプロフェッショナル用まで幅広く楽器を提供していることも知られています。そして、ご存知の方も多いと思いますが、あのハイエンドブランド「ジェームス・タイラー」のOEMも受注する職人の腕前が魅力なのです。ハンドメイドシリーズは、この職人の方による手作り。日本人の誇りとも言える技術力、さらに世界に拡がってほしいですね。

彼女のトレードマークとも言えるのが「Bacchus BJM」。ピンクのボディに美しいピックガード、そして指板に施されたデザインが印象的です。

新しいギター「SAKURA」。その名の通り桜の木を使ったホロウボディ。プックガードとフィンガーボードに施された桜のデザインが素敵です。ラッカーフィニッシュにより、桜の木をしっかり味わえます。

他にも色々と活躍中のNathania

ソロだけではなく、「Catur Pupa」というバンドでの活動など、彼女の音楽を楽しめるところは色々とあります。日本のギターブランドのエンドーサーということもあってなのか、彼女が日本のフュージョンを演奏する動画も観た記憶があり、日本が好きなのかなと感じました。

「音楽に国境はない」という言葉をよく耳にしますが、日本の楽器をインドネシアのミュージシャンが使っているという事実や、日本人の曲を演奏しているシーンを見かけると、この言葉のリアリティを感じます。インドネシアのミュージシャンの音楽性はどこか日本人の好みに近いかもしれません。Nathaniaの音楽が気に入った方は、他のインドネシア人ミュージシャンもチェックしてみてはいかがでしょうか。