サックス奏者 山田拓児さん インタビュー

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 バークリー音楽大学で出会った画期的な『システム』とは?

 

― 短大進学後、海外留学へ行かれる際は、バークリー音楽大学の奨学金制度を利用して行かれたそうですね。選出されて留学されたわけですか?

山田「そうです。代々木で演奏オーディションがありました。最初、僕はニューヨークにいくつもりで、通う語学学校も決めて手続きをしていたんです。バークリーに行く予定じゃなかったんですが、先にバークリーへ留学していた友達が一応、オーディションを受けておけ。と言ってくれたのと、その年の9月11日にニューヨークで同時多発テロが起きました。事件から2週間後にバークリーから『奨学金出します』という通知が来て、そういうタイミングなんだな。と思ってボストンへ行こう。と思いました」

 

― バークリー音楽大学。名門ですね。行かれてみてどうでしたか?

山田「行って正解でした。音楽教育そのものが、根本的に違うというわけではないんですが、学校のシステムがすごく良いんです。奨学金をもらって留学した生徒は『プロジェクトバンド』というものに入れられるんです。毎週集められて演奏します。何を演奏するのかというと、楽曲アレンジを勉強している学生の課題曲を演奏する。バークリーは音楽を書くクラスも充実していて、『アンサンブル1』とか、そういうクラスが色々とあって、そのクラスの生徒は自分が書いたアレンジを実際の楽器で演奏して、それを録音したものを課題として提出しなくてはならない」

 

― そこで、演奏を担当するのが奨学金学生で構成される『プロジェクトバンド』なんですね!

山田「そうです。決まった日にそこへ楽譜をもって来てくれれば、僕たちはその譜面を読んで演奏する。その活動に参加しないと、奨学金が貰えないようになっている。という、画期的なシステムです」

 

― そこに参加することで、学生同士が作品作りをするシステムが確立しているんですね。

山田「これを日本にも導入したらいいのに。と思っています。日本でもクラシック科と一緒に勉強する機会はありましたけど、毎週一緒に課題を作るという環境ではなかったですね。あっても学期末の試験だけ。バークリーでは毎週、新しい楽譜を読んで色んな曲を演奏しました」

 

― バンドのメンバーは固定なんですか?

山田「そうですね。今学期はこのメンバーで、と決まっていて、来学期はビッグバンドでとか。ビッグバンドに入ると、ビッグバンドのアレンジを勉強している学生が楽譜を持ってくるんです」

 

― 素晴らしい環境で勉強なさったんですね。生活の方はどうでしたか?

山田「文化が全然違う。ということを感じました」

 

― 先ず、言葉の壁もありますよね。英語はお得意だったんですか?

山田「いえ、全然。渡米してから入学まで半年くらい時間があったので、その時は楽器に触らないでずーっと英語の勉強をしていました。でも半年勉強した位だと、全然ダメで。学校の宿題で何が出たのかわからない(笑)」

 

― その大事なところがわからない(笑)。そんな時はどうなさったんですか?

山田「友達とコミュニケーションを取って、あ、これをやってくればいいんだ、と。その頃は、演奏しているとその言葉の壁から解放される感じがあって、楽でしたね」

 

― 音楽は共通の表現方法ですものね。言葉以外に大変だったことはありましたか?

山田「食べ物もだんだん慣れてくるし、本気で帰りたいと思った事は、そんなに無かったですね。それなりに苦しいことはあるにしても、上手くいくこと、いかないことがあるのは、どこでも一緒かな。と。文化の違いを知ることができたというのが、一番大きかったです」

 

― 感じられた文化の違いには、どんなことがありましたか?

山田「うーん。例えば、食事をしていて、卓上の塩を取るとき。僕たちだと自分で手を伸ばして、相手の前を遮るような動作をしても、それほど失礼な感じはしないけど、あちらでは自分のテリトリーを侵されたということで、嫌がられるみたいです。僕たちにはその感覚が無いので、そういうちょっとした違いが面白かったです」

 
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