今年8月にサッポロシティジャズ『PARK JAZZ LIVE CONTEST ON WEB』で特別賞を受賞した中学生バンドsnack time(スナックタイム)。中学生バンドとしてはめずらしい単独ライブを2020年10月17日に人気のジャズクラブD-Bopで行いました。今回は、この注目を集める中学生バンドのステージをレポートします!
ライブ前のメンバーの村越葵さん、村越蓮さん、山口陽大さん、藤野桐士さんにちょっとだけインタビューをさせていただきましたので、まずはその模様から。
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インタビュー
(編集部)snack timeの皆さん、こんにちは!
(メンバー全員)こんにちは!
(編集部)ライブのチケット、ソールドアウトだったそうで、すごい人気ですね。
(山口陽大Key)びっくりしました!サッポロシティジャズのコンテストの後から、僕たちのことを知っているという人が増えたと思います。僕の学校では、snack timeの音楽を聴く人のことを『菓子民(カシタミ)』と呼ぶようになって…。
(編集部)人気者なんですね。それにしても、なんで『菓子民』?
(山口陽大Key)お菓子のスナックと、音楽を聴く民。ももクロの熱狂的なファンをモモノフっていうところからきているそうで(笑)。
(編集部)中学生らしいですね(笑)。ところで4人はどこで出会ったんですか?楽器が上手な4人がどこで出会ったのか気になります。
(村越蓮Tp)私たちは札幌ジュニアジャズスクールで出会いました。葵、桐士、私の3人は小学生のときから入っていて、陽大が中学生から入って4人でバンドをはじめました。
(編集部)それは運命的な出会いでしたね。そういえば、札幌ジュニアジャズスクールのLowlandJazzワークショップのとき、いつも4人いますよね?LowlandJazz好きですか?
(藤野桐士Dr)演奏技術もアレンジも人柄も…憧れるところばかりです。今年はコロナで会えなかったけど、ライブ配信で『夜咄ディセイブ』をやってもらえて!とってもうれしかったです!
(村越葵As)一緒にセッションもしてもらえて、夢のようでした!
(編集部)それはLowlandJazzのメンバーも喜びます。先日のサッポロ・シティ・ジャズのコンテスト、私も動画で拝見しました。あれだけのアンサンブルの精度、練習は大変だったんじゃないですか?
(村越蓮Tp)実はコンテストの前日に変更した部分があったり、最後の最後までがんばりました。結果、賞もいただけたし、とてもうれしかったです。でも、今度は無観客ではなく、お客さんがいっぱいの中で演奏をしたいです。やっぱりライブは楽しいですから。
(編集部)そうですよね。今日のライブは念願だったんじゃないですか?
(村越葵As)はい、D-Bopさんはとても大好きなお店なんです。私もここでサックスを吹いたこともあって。snack timeで演奏できるなんて思っていなかったので夢のようです。社長さんに感謝しています。
(編集部)中学生で単独のライブ、すごいですね。持ち曲がたくさんあるんですね。
(藤野桐士Dr)全然ありません。今日はできる曲全部です(笑)。
(編集部)そうそう、バンドのホームページで読みましたが、葵ちゃんはアルゼンチンで演奏したんですよね?
(村越葵As)はい、小学校5年生のときにスイスの「Swing Kids」っていうキッズバンドの指導をしている木元大さんから声をかけていただきました。スイスやパラグアイでも演奏できて、とってもいい思い出になりました。
(編集部)それは、すごい!その年齢でワールドツアーなんて!どれくらいの間行っていたんですか?
(村越葵As)2週間くらいです。人生初の海外旅行でヨーロッパから南米まで行けるなんて!
(編集部)ドラムの桐士君、最近の『リズム&ドラム・マガジン』で10代ドラマーとして石若駿さんが紹介していましたね。ところで、めずらしいシンバルを使っていますね。どちらのメーカーのものですか?
(藤野桐士Dr)これはMurat Diril(ムラート・ディリル)というトルコのシンバルメーカーのものです。日本ではまだあまり使っている人はいないと思いますが、海外ではとても有名です。インドネシア人ドラマーのRayendra SunitoさんやYandi Andaputraさんが使っているのを見て興味を持ちました。父が無類のシンバル好きなので、思いがけず手に入りました。
(編集部)それはお父さんに感謝ですね(笑)。どんなところが気に入っていますか?
(藤野桐士Dr)他にはないカッコいい見た目と音が気に入っています。ダークでサスティーンの短いHommage、明るいけど意外とサスティーンが短いDizzy。Dizzyはグルグル模様なので「渦巻き」って呼んでます。日本の代理店さんがとても親切でサウンドづくりの相談に乗ってもらえるので、そのこともMurat Dirilのシンバルを選んでよかったと思うところです。
(編集部)蓮ちゃんがYouTubeにアップしている『Friday Night Fantasy』の応援コメント、すごいですね!あの曲は大人でも難しいって言いますよね?
(村越蓮Tp)はい。結構体力つかいます(笑)。いまでもコメントしてくださる方がいて、頑張って挑戦してよかったです。
(編集部)トランペットは6歳からはじめたとのことですが、どうしてトランペットを選んだんですか?
(村越蓮Tp)両親とYouTubeでエリックミヤシロさんの演奏動画をよく見ていて、エリックさんのハイトーンに憧れてはじめました。
(編集部)陽大君はキーボードでベースのパートも担当しているんですよね?それってピアノパートに専念できなくて大変だとか悩みはありませんか?
(山口陽大Key)大変です(笑)。でも、ベースがいないからこそ、僕の自由度が広いっていうメリットもあるんです。和音を出すのは僕だけですから。ドラムに合わせさえすれば、僕色のオケを作れるのが醍醐味でもあります。
(編集部)本当に中学生?(笑)。そういえば、陽大君は、タシナムでコラムを執筆しているYoYo(Soffet)のライブにいつも来ていますよね。彼のどこが好きですか?
(山口陽大Key)ピアノの弾き方とかソロの部分はもちろんですが、聴いている人を楽しませてくれる演奏が大好きです!
(編集部)ありがとうございました。今日の演奏、楽しみにしていますよ。
(メンバー全員)こちらこそ、本当にありがとうございました。がんばります!
ライブレポート
会場には小学生くらいの小さなお子さんから大人まで幅広い年齢の人々が。ファミリーも多く和やかです。この雰囲気、昼公演ならではですね。開演時間になり、メンバーがステージに上がると会場にはあたたかい声援があふれていました。
【第1部】
1.Mela!
中学生らしく元気たっぷりのスタート!『Mela!』は緑黄色社会の人気曲。TV番組でスッキリの企画『スッキリ×アカネキカク ひとつになろう! 高校生 ダンスONEプロジェクト』で、全国の高校生ダンス部が、この曲のダンス動画を投稿して話題になっています。この曲、snack timeの演奏で聴くと新たな魅力が溢れます。J-POPらしさあふれるこの曲はメンバーそれぞれの音がガンガン届く。まるでメンバーが音で挨拶をしてくれているようです。
サックスとトランペットの爽やかなハーモニー。爽やかなキーボードとキレの良いドラム。一曲目から桐士が全開のドラムソロも披露。迫力のある演奏に会場に拍手があふれました。
2.Rise And Shine
サックス葵のかわいらしいMCの後は、雰囲気がガラリと変わります。なんとRobert Glasperのカバー。ピアニストの曲らしくキーボードの陽大の見せ場が多い。緩急をつけたピアノソロのアプローチにブラスのバッキングでテンションを上げます。snack timeとはこんな音楽もあるバンドだったのだと2曲目であらたな印象を得ました。ラストの葵のサックスソロの後に緊張感溢れる終わり方に驚いた観客が多かった様子。
3.Four
snack timeのジャズは続きます。今度は楽しいジャズ。トランペット蓮のアドリブは、中学生とは思えない滑らかなフレーズ。アドリブ慣れしていますね。アドリブを楽しんでいる様子に会場も一体になっているようでした。アドリブをまわす4人、ジャズの楽しみ方をわかっている…。笑顔でジャズを演奏する中学生の喜びが伝わったのか、いつの間にか会場に笑顔があふれていました。
4.Moanin’
『Moanin’』と言えば、誰もが知っているジャズのスタンダード。タイトルを知らずとも「聴いたことある!」という曲ですね。snack time流の『Moanin’』は、実にユニークなファンクテイストでした。イントロでは『Moanin’』だと気づかなかった人も多かったのではないでしょうか。大人の曲ですが、中学生が背伸びしている印象はありません。新しい時代の『Moanin’』を聴いてるというのが正しいでしょう。キーボードの陽大の音色はこの曲の世界観に一番貢献しています。彼の音が、この『Moanin’』を色々なカラーに染めている、そんな気がしました。
5.夜に駆ける
ファーストセットの最後に持ってきたのは、今年大ヒットのYOASOBIの『夜に駆ける』。若者たちを中心に驚異的なヒットを誇っている名曲をsnack timeもカバーしています。YouTubeに投稿している動画は短期間に1万回以上再生されており話題に。この演奏をきっかけにsnack timeを知った人も多いのではないでしょうか。この曲は原曲の雰囲気を大切にしつつ、サックスのアドリブで「らしさ」を魅せていました。会場でも馴染深い曲の演奏に、リズムに身を任せながら楽しんでいる人も多かったようです。
【第2部】
1.Song For Bilbao
第2部のスタートは、パットメセニー。葵が、何年も前から気に入っていた曲とのこと。『Song For Bilbao』という名曲をsnack timeはしっかりリスペクト。原曲の雰囲気を大切にしながらメンバーのアドリブで個性を魅せます。ラストのドラムソロでしっかり盛り上げて、休憩時間のクールダウンを一気に解消しました。
2.Chaining Intention
ここでいよいよパークジャズライブ特別賞を受賞した『Chaining Intention』の登場。この曲を聴くためにライブに来たという人もいるほど。前曲とは異なり、今度は本家のChaining Intentionとは違った自分たちらしさ全開のメンバー。大好きな曲を自分たちなりに。現代っ子らしさを感じます。サックスとドラムのデュオでジャズテイストを印象づける展開を、このライブでも観せてくれました。ヒートアップしたメンバーのソロが炸裂した後に、トランペット蓮のフィーチャーでクールダウン。そして、ライトに突入し一気に盛り上げるという、どんどん展開し続けるスピード感はsnack timeならではと言えるでしょう。この曲を終えたあとの拍手はひときわ大きく、メンバーも満足気な表情でした。
3.Send One Your Love
ライブは佳境に突入。またも雰囲気をガラッと変えてバラード。ここでトランペットの蓮は唇休め。スティービーワンダーのSend One Your Loveは葵のサックスの引き出しの多さを再認識させてくれる一曲でした。キーボード陽大とサックス葵のベストマッチが印象的で、会場にもあたたかい雰囲気が。
4.夜咄ディセイブ
snack timeのみんなが大好きなLowlandJazzのカバーに影響を受けたというボカロの名曲。この疾走感にsnack timeが元気いっぱいの中学生だということを思い出させてくれました。ボカロというジャンルのチョイスもユニーク。原曲はギターのカッティングが印象的なロックナンバーですが、snack timeはサックスとトランペットのコンビネーションで自分たちらしさ表現。イントロのLowlandJazzっぽさ。見逃しませんでした(笑)。
5.The Chicken(アンコール)
アンコールは、ファンクのセッション曲としても人気の高いナンバー。ベースがいないsnack timeがジャコ・パストリアスの名演で有名なこの曲をチョイスするのも面白いですね。メンバー全員、最後の曲ということもあり、エネルギー全開です!メンバーの全力のアドリブをしっかり味わって完全燃焼のステージが終了しました。
終演後
終演後の会場は、大人のライブではあまり見ないほのぼのムードが広がっていました。「あたたかい気持ちになったよ」「楽しかった~」そんな言葉でいっぱいのsnack timeのジャズクラブデビュー。これからの活動も注目です!
バンド&メンバープロフィール
snack time(スナックタイム)
2019年に結成された平均年齢13歳の中学生バンド。『2020年 PARK JAZZ LIVE CONTEST ON WEB 特別賞』。島村楽器HOTLINE2019 北海道エリアファイナル優秀賞、ベストパフォーマンス賞、ベストドラマー賞を受賞。
8歳で倶知安のMt.Youtei Jr.JAZZ Schoolにてアルトサックスを始める。
10歳のとき、世界中で演奏活動を行うスイスのキッズバンド 「Swing Kids」の指導者で トランペッターの木元大氏の誘いを受け、Swing Kidsと共にスイス、パラグアイでの演奏、アルゼンチンのイグアスで行われた青少年国際音楽祭「IGUAZU EN CONCIERTO2016」に日本人で初めて参加。
現在は札幌市内を中心にジャズクラブでのライブ活動を少しずつ始めている。
6歳でトランペットを始め、倶知安、札幌のジャズスクールにて活動。
2017年9歳の時に演奏した「Friday Night Fantasy」をYouTubeにUP。
再生回数は5万回を超える。
5歳からピアノを始める。9歳からピアノデュオSkylerとしてグループホーム、病院などでライブ活動を行う。
11歳の時に大友良英氏による札幌国際芸術祭2017さっぽろコレクティブオーケストラに参加。
10歳のときに日野皓正クインテットと共演。11歳で「第6回全国ポップス&ジャズバンドグランプリ大会2019」ソロアドリブ部門にて「ジルジャン賞」を受賞。翌年「島村楽器HOTLINE2019 北海道エリアファイナル」にて「ベストドラマー賞」を受賞。「イケベミュージックグランプリ2020」にて「Pearlベストドラマー賞」受賞。
(取材:2020年10月)