imgp1526-2『健康でいないと、不健康なことは書けない』~『普通』な夢と目標は?

 

― 週末には休む。リズムのある生活を送っていらっしゃる桜木さんですが,創作活動となると、なかなか書くことと生活することの折り合いが難しい場合もあるのではないでしょうか。そういう時にはどうされるんですか?

桜木「特別、書くことを意識しない時間が(小説を)書かせてくれるんです。24時間営業であることには変わりないのですが、ボーっとしているときにタイトルが浮かんだり、犬と散歩して休もうと思っているときに一行目が降ってきたり。柔軟にやっていられればいいな。と思っています」

 

― とても自然ですね

桜木「そうでないとね、持たないの(笑)。私なりにプレッシャーを感じているんですけど、みんな『マイペースですね』って言うのは、何でだと思う(笑)? 余裕なんて全く無いのに!」

 

― そこもズレていますか(笑)

桜木「もっと、眠れないとか、病気したとかアッピールしたほうがいいのかな(笑)。でもね、健康でいないと、不健康なこと書けないからね。いろんな話を書くためには健康でいないと」

 

― 健康のために、何か気をつけていらっしゃることはありますか?

桜木「きちんと眠ることですね。ちゃんと朝起きて、ごはんを食べて。思うようにいかなくてイライラすることもあるんです。朝、これだけやろうと思ったことが半分も終わらないと落ち込むんだけど、そこで、徹夜すればできる、と思わないようにします。じゃないと次の日、使い物にならないから。長期的展望を持ってね。あまり、今、今、に拘らないように。とにかく健康でいないと遊びたいとも思わないし、食べたいとも思えないしね」

 

― 作家の生活はもっと不規則なものだと思っていました。

桜木「そういう生活はデビュー前に十分経験したので、もういいかな、と。全部お約束すると出来ないので、最近は迷惑をかけないように、確実に締め切りが守れるお仕事をさせてもらっています。今年3冊出して、来年出さない。というわけにはいかないのでね。年に長編を1本、勉強させてもらうためにも短編を数本、それをきちっと書いていく」

 

― ご自身の目標を設定していらっしゃるんですね。

桜木「年に長編1本というのは自分に課している課題です。1本、1本、何かを掴んで次に行く。私はあちこちで連載しているわけではないので、あんまり働いているようには見えないですよね。でも、長編を1本書くのに1年かかるんです」

 

― 桜木さんはご自身の目標があって、そこに向かう姿勢にブレがないから、マイペースですね。と言われるんでしょうね。

桜木「そうなんでしょうかね(笑)」

 

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― それでは最後に、今後の目標と夢を教えてください。

桜木「現状維持!」

 

― 間髪入れずに『現状維持!』と答えた方、これまでのインタビューで初めてです(笑)

桜木「現状維持で、きちんと望まれるものを書いていきたいです。あとは家族を大事にしてね。それから、健康でいること」

  

― 近々、予定していらっしゃることはありますか?

桜木「今、新聞連載の準備をしています。そのためにも規則正しい生活。連載は月曜から土曜日までの毎日、1年間の長丁場ですから。ある程度書き溜めないといけないし、そのために家に篭って仕事をする時間も増えるので、家の中に居る自分を充実させていこうと。やっぱり岩盤浴かな。と(笑)」

 

― 過酷なお仕事のためにも、健康と生活の充実が必要なんですね!

桜木「そして、映像化が決定している『氷の轍』という作品が9月26日に発売されます。最初からドラマ原作として書き始めましたが、これも意外と辛いものですね。プロデューサーに『例えば、どんなの書けばいいですか?』って聞いたら、でっかく出ましてね、『飢餓海峡』って言われて。そうかー。聞かなきゃよかったなあ。って(笑) 『飢餓海峡』、『人間の証明』は日本に古くからある、がっちりして、きれいな物語ですから、それはいいですねー!で、誰が書くの? と(笑)。2年かかりまして、やっと本が出ます。」

 

― それは楽しみです。拝読いたします! 今日は本当にありがとうございました。

桜木「こちらこそ。お茶、美味しかったので、もう一杯いただいてもいいですか?」

 

― はい! この中国茶器、蓋と杯に隙間がありますね。でも不良品ではないんですって。お茶を注ぐために微妙にズレて隙間ができるように作ってあるそうですよ。

桜木「そう、知らなかった。これ、私達だ。何か出すためにイビツなんだよ(笑)」

 

 ※取材協力:中国茶専門店『楼蘭』:http://tashinam.chodosya.com/mibun/shop201701/

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 桜木 紫乃 (さくらぎ しの)

 1965年4月19日 釧路市出身 

 2002(平成14)年「雪虫」でオール讀物
新人賞を受賞。2007年同作を収録した単行本
『氷平線』でデビュー。デビュー後、次回作の
出版まで雌伏の時を札幌道頓堀劇場で過ごす。

 2012年『ラブレス』で島清恋愛文学賞。
 2013年『ホテルローヤル』で直木賞受賞。
 年1本の長編と数本の短編を発表。文壇の
第一線で活躍を続ける、北海道在住の作家。

 

  (取材:2016年 9月)

 

 

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