みなさんこんにちは。サックスの門田です。

 

2〜3月の初のソロツアーも無事終わり、しばらくドリップした後のコーヒー豆みたいな出涸らし状態でしたが、4月からは隔月で毎回ゲストを変えてのセッションイベントがスタートしたり、自分のバンドBARBの方もそれと交互に同じく隔月でのライブをスタートしたりと次の企画も動きだし新しいリズムを感じ始めています。

 

みなさまはいかがお過ごしでしょうか?

 

さて、前回は親子ネタからの割と無理やりな流れでの紹介となりましたが、、
今回はガチ親子対決の隠れた名盤行きたいと思います。

 

 

Choices / Dewey Redman

 

 

 

 

 

 

サックス奏者の親子、デューイレッドマンとジョシュアレッドマンのアルバムです。

 

息子のジョシュアはぼくが高校生くらいの時にデビューして日本でも大きな話題になっていたのを今でもよく覚えていますが、『あのデューイレッドマンの息子が、、』というように当時紹介されていたのがあれよあれよと言う間に現代のジャズシーンを牽引する存在へと上り詰め、今の若い世代にはジョシュアのお父さんとして後からデューイを知る人の方が圧倒的に多いのではないでしょうか。斯言うぼくもそんな順番でこの親子の音を聞いた一人なので、今回はそういったジョシュアのルーツとしてのデューイというような視点も交えてこのアルバムを見てみようと思います。

 

ジャズを聴き慣れていない人にはちょっと取っつきにくいアルバムかもしれませんが、いわゆるジャズが難しく感じて敬遠してしまう、、という様な方でも、ちょっと聞く時のポイントというか、ツボを押さえて聞いてみると楽しめたりすると思うので、もし実際に音を聴いてみる時には是非色々想像を巡らしながらトライしてみてください。

 

まずは二人の簡単なプロフィールから。(一部wikipediaより引用)

Dewey Redman 画像元: http://urx.red/JKIN

 

デューイ・レッドマン(Dewey Redman,1931年5月17日 – 2006年9月2日)

サンフランシスコでの、ファラオ・サンダース等との競演の後、1967年にニューヨークへ移住。 同郷のオーネット・コールマンのカルテットに加入、1972年まで活動を共にする。 同時期にチャーリー・ヘイデンのリベレーション・ミュージック・オーケストラ、キース・ジャレットのいわゆるアメリカン・カルテットでも活動。キース・ジャレットの『残氓(The Survivor’s Suite)』’は、メロディー・メイカーのジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。 1976年、コールマン・グループのメンバー、ドン・チェリー、チャーリー・ヘイデン、エド・ブラックウェルと共にオールド・アンド・ニュー・ドリームスを結成した。
2006年、肝機能障害で死去。75歳

 

Joshua Redman 画像元: http://urx.red/JKIQ ©Jay Blakesberg

 

ジョシュア・レッドマン(Joshua Redman , 1969年2月1日- )

アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー生まれ。 ジャズサックス奏者のデューイ・レッドマンを父に持つ。
1991年にハーヴァード大学を卒業後、出場したセロニアス・モンク・コンペティションで優勝、シーンに躍り出た。 2作目のアルバム『Wish』では、父デューイ・レッドマンゆかりのミュージシャンパット・メセニー、チャーリー・ヘイデン、ビリー・ヒギンスをサイドに迎え、注目を集めた。その後は同世代のブラッド・メルドー、クリスチャン・マクブライド、ブライアン・ブレイド、ピーター・マーティン、ラリー・グラナディア、サム・ヤエルらと親交を深め、コンセプチュアルなアルバムをほぼ毎年製作している。
自己のグループ、「エラスティック・バンド」、および「サンフランシスコ・ジャズ・コレクティブ(SFジャズ・コレクティブ)」を率いて活動してきた。
2009年末、バンド「ジェイムス・ファーム (JAMES FARM)」を結成。
その後も現在に至るまで新しい世代やジャズ以外のジャンルのミュージシャンとも積極的に交流を持ちミュージックシーンを牽引し続けている。

 

二人ともそれぞれに凄い経歴ですが、、

 

まず父デューイの共演者に上っているファラオサンダースやオーネットコールマンはいわゆるフリージャズ、スピリチュアルジャズと呼ばれる分野の第一人者でデューイの演奏にもその影響は色濃く見受けられます。
ピアニストのキースジャレットは「沈黙の次に美しい音」をモットーとするヨーロッパのレーベルECMの代表的なプレイヤー。
このグループで繊細なメロディーを美しく歌い上げるデューイからは、前述の二人との共演で見せるアグレッシヴさとはまた違った一面を垣間見ることも出来ます。

 

そして息子ジョシュアはというとそんなジャズマンとして尖った父を持ちつつハーバードを卒業して有名コンペで優勝、その後も名だたるジャズレジェンドとの共演を重ね現在もジャズの進行形を作り続けている、サラブレッドの様な人ですね。

 

いかにも難しいアレンジの曲を涼しい顔をしてさらりと吹きこなすかと思えば、父親譲りのスピリチュアルで情熱的なソロを聴かせたり、ブルージーで泥臭さい動的な歌心とECMの空気感を思わせる様な静的な歌心を使い分けたりと、本当に守備範囲の広い人でぼくも昔からずっとリスペクトしているミュージシャンです。

 

こういう紹介文などではあえて触れてこなかったですが、20代〜今に至るまで、一番好きで聴き続けているサックスプレイヤーかもしれません。

さて前置きが長くなりましたが、そんな親子の共演している音源のひとつが今回紹介するアルバムです。

 

1992年発表なので、ジョシュアが大学を卒業した頃の演奏ということになりますね。
5曲中最初と最後が親子共演、2曲はフロントをデューイのみでのトリオ演奏、残る1曲はジョシュアが変わってリードを取ってのトリオという内容になっています。

 

まずは1曲目から。

 

1. LE CLIT

キメキメなリフとフリーな雄叫びの様なフレーズのテーマ部分の後は父デューイが先行してソロを取ります。いきなりデューイ節全開でフリーなソロ。ピアノレスな編成ということもあってより一層フリー感が強いのかもしれません。それを受けて後半に出てくるジョシュアは割としっかり調性を感じさせる様な吹き方でソロを作っています。こういう様なアバンギャルドとポップの境界線をうまく行き来するのもジョシュアの個性の一つかもしれません。

2. EVERYTHING HAPPENS TO ME

古くからのジャズスタンダードナンバーをデューイのテナーで朗々と歌い上げるこのトラックでは、前曲の様なフリーなスタイルはなりを潜めひたすらにトラディショナルなスタイルでストレートに演奏しています。
冒頭にも書いたジョシュアの守備範囲の広さは、父親のこういう部分から来ているのかもしれません。しかしやっぱり良い曲だなぁ、この曲。

3. O’BESSO

デューイはサックス以外にもミュゼットという楽器を演奏しますが、このトラックはそれを全面にフィーチャーしています。
楽器としてのミュゼットにはいくつかの形態がある様ですが、デューイの演奏していたものはフランスの様々な地域において、伝統的な民族音楽に利用されるシャリュモー(キーなしのオーボエ)、日本で言うところのいわゆるチャルメラの様です。かなり民族的な世界観ですが、リズムは割と馴染みやすいノリだったり。こんなところにもバランス感覚の妙を感じます。

Dewey Redman 画像元: http://urx.red/JKIR

 

4. IMAGINATION

スタンダードナンバーのバラードを今度はジョシュアフィーチャーでの演奏。今でも聴けるジョシュア節を、大学を卒業したこの頃に垣間見ることができます。いやしかしこれでハタチそこそこの演奏とは、、、想像するだけでため息。。。

5. FOR MO

シメはまた親子揃っての演奏ですが、最初よりもよりフリーな感じを全面に出しています。
1曲目では一応テーマらしきものが最初と最後にくっついていましたが、これは出だしから父のフレーズをジョシュアが追うような形で進みます。
ただテンポだけ出して出たとこ勝負でやっているのではないかと思うのですが、それにしてもジョシュアは本当に耳が良い。< br />
ジョシュアのリーダーアルバムなどでもサイドマンの出した音に瞬時に反応してフレーズをなぞったりするシーンがしょっちゅう出て来ますが、昔から親子でこういう音のやり取りをずっとしていたんだろうなと思わせる演奏が続き、そのままフェードアウトして終わります。

 

今回紹介したこのアルバムは今までの中では比較的アバンギャルドなカラーの濃い作品ですが、それでも要所にバランスの配慮が感じとれます。
ぼくがいわゆるフリージャズというようなものに初めて触れたのは中学生の頃だったか、、コルトレーンの後期のライブ盤でした。もう最初から最後までずっとフリー全開、聞く方のテンションなんてお構い無しという内容でその時は全く受け入れられなかったのですが、その後高校生の頃に行った、とあるサックス奏者の方のライブでちょっと考え方が変わりました。
とてもメロディアスで馴染みやすい世界観からはじまって、徐々に熱を帯びて混沌とした世界へと入って行ったそのライブは、敷居の低い間口から入って、終わって出て来てみたらなんかちょっと高いところへ連れていかれて景色が変わったような感覚でした。

 

その体験の後、自分の中の価値観に、綺麗に創り上げたものを自ら越えようとする時の熱の魅力みたいなものに惹かれるようになり、それはいまだに自分の価値観の一部な気がします。

 

さてさてそんな訳で4回目にしてだいぶディープな感じになって来ましたが、、大丈夫かな、この路線、、、笑。
ぼく個人としては好きなものを掘り下げていく作業で楽しかったのですが、、、なるべく皆さんにもその楽しさの端っこだけでも伝えられるよう工夫したいと思いますので、懲りずに引き続きおつきあいくださいませ!

 

ちなみにジョシュアの新作は5月に発表されるようですが、奇しくも父デューイの作品にインスパイアされたものなのだとか、、!ぼくも一ファンとして発表を楽しみに待ちたいと思います。

 

それではまた次回!!

 

                                                              2018年4月 門田”JAW”晃介

 

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