凄いギタリストとか、上手いギタリストの定義って何なんでしょうか?

答えはありません! 人によって感受性が違いますから(笑)

勿論、私のなかには定義があります。
ある一定レベルのテクニックがあることと、インパクトとセンスがあること。
テクニックは別にしても、このインパクトとセンスって言うのがまたクセ者で、人によって受け止め方が全然違います。リスナーの育った環境や聴いてきた音楽によって変わってきますから。

今月は、そうは言いながらも、音楽がよほど嫌いな人でなければ、ほとんどの人がひれ伏すであろう天才ギタリスト、デレク・トラックスの記念すべきファーストアルバムを紹介いたします。

 

The DEREK TRUCKS band

 THE DEREK TRUCKS BAND
(アルバム名はバンド名に同じ)
1997年録音

メンバー
デレク・トラックス(g,sarod)
トッド・スモーリィ(b)
ビル・マッケイ(p,org,vo)
ヨンリコ・スコット(ds,per)

 

スペシャルゲスト
ゲイリー・ギャザウェイ(tp)
 ※3曲目、555Lakeのみ
 

収録曲
  1.Sarod
  2.Mr.PC
  3.555Lake
  4.Dminor
  5.#6 dance
  6.Footprints
  7.Out of madness
  8.Naima
  9.So what
10.Evil clown
11.Egg 15
12.Sarod outro
 

197001

DEREK TRUCKS 画像元: goo.gl/9lg9og

   
デレク・トラックスは1979年生まれですから、このアルバムの録音の1997年当時はナント18才! まさに天才!
デレク・トラックス・バンドは1994年に結成されているので、15才の時にはリーダーバンドを持っていたことになります。驚きです。

デレク・トラックスはオールマン・ブラザース・バンドのドラマー、ブッチ・トラックスの甥として9才からギターを弾き始め、デレク自身も1999年からはオールマン・ブラザース・バンドのギタリストとして正式に加入しています。(2014年脱退)
デレク得意のスライドギターは、オールマン・ブラザース・バンドのギタリスト、故デュアン・オールマンへの強いリスペクトから生まれています。

デレクのプレイスタイルはアメリカ南部出身のギタリストらしくサザンロック、ブルースロックに基本を置いていますが、演奏内容はジャズや、フュージョンを取り入れたジャズロックまでと幅広いです。
このアルバムは新世代世界3大ギタリストと称される、若き日のデレク・トラックスがジャズとロックの融合を独自の解釈で弾き倒す、ロックファン、ジャズファン問わず楽しめる傑作ジャズロックアルバムです。

それでは簡単に曲の紹介をしたいと思います。

 

Tedeschi-Trucks-Band

THE DEREK TRUCKS BAND 画像元: goo.gl/DPx8e2

 
1. “Sarod”

曲名の『サロード』はインドのシタールに似たフレットを持たないギターのような作りの古典絃楽器。2曲目に続けるためのイントロダクションな幻想的小曲。

 

2. “Mr.PC”
ジョン・コルトレーン作曲のジャズスタンダード。
マイナーブルースのこの曲を、エフェクターなしのストレートな音色で、ゴリゴリと攻め立てます。
このアルバム1番の聴きどころです。
“Mr.PC”とはジャズベーシスト、ポール・チェンバースのこと。


3. “555Lake”

このアルバム唯一のヴォーカル曲。
パワフルなブルースロックを歌うのはビル・マッケイ。
スペシャルゲストのゲイリー・ギャザウェイのミュートの効いたラッパがマイルス風でとってもクール。


4. “D minor blues”

曲名はブルースですが内容はメロウなバラード。
Dマイナーバラードブルースって感じでしょうか。
ジェフ・ベックの名曲『哀しみの恋人達(邦題)』(原曲名Cause we’ve ended as lovers)
を意識したような曲作りです。
ゆったりした入りから盛り上がり、起承転結がしっかりしている秀作バラード。


5. “#6 dance”

小気味良いテンポで弾きまくるインストロックンロール。
2分半の少し短めの曲にカッコ良さが一杯詰まっています。
途中、転調する部分のデレクのアドリブがキマっていて思わずエビ反ります。


6. “Footprints”

幻想的なミディアムバラード。
エフェクター使わずにここまでの音色を出すのだからデレク恐るべし!
ピッキングスタイルもピックを使わないフィンガーピッキング奏法です。


7. “Out of madness”
トリッキーなテーマから、リズム隊のサポートを受けて、デレクがアドリブを弾きまくる展開の曲。
アドリブはデレク、トッド、ヨンリコの順。


8. “Naima”

ジョン・コルトレーンが妻ネイマに捧げたバラード。
この曲をカヴァーするミュージシャンは多数いますが、過去にこんなにカッコよく演奏したギタリストは記憶にありません。当時18才のデレクの才能に只々驚くばかり。


9. “So what”

マイルス・デイビス作曲のジャズスタンダード。
マイルスが完成させたモード手法のための曲を見事な解釈で演奏しています。
曲名の『ソーホワット』はマイルスの口癖で、その意味は『それがどうした!』


10. “Evil clown”

デレクのアドリブが途中からアウトして、それが浮遊感漂う曲調に拍車をかけています。
新しい何かを見つけるための実験的な曲。


11. “Egg15″

メンバー全員のアドリブを廻していくメンバー紹介のような曲。
ライブを見に来たような感覚で楽しくなります。
ビル・マッケイのオルガンの音色が最高です。

 

12. “Sarod outro”
 1曲目と同じくサロードでのエンディング小曲。
サロードに始まりサロードで終わることで、デレクが音楽的にも精神的にもインドに傾倒していることが解ります。

 

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THE DEREK TRUCKS BAND 画像元: goo.gl/Znz579

 
今から10年前の2006年のエリック・クラプトン札幌ドームライブのサポートギターがデレク・トラックスでした。勿論、テクニック的にはデレクはクラプトンよりも一枚も二枚も上手の凄腕ギタリストですが、決してクラプトンより前に出てこないアドリブやヴォーカルを引き立たせるサポートの姿勢にプロの凄味を感じました。
ギタリストは目立ちたがり屋で出たがりが多いので、サポートに徹した時の彼の姿に驚いたことを覚えています。

現在は奥様のバンドとデレク・トラックス・バンドを合併した、テデスキ・トラックス・バンドとして活躍中です。このバンドは南部の香りがプンプンのサザンロック中心の演奏ですが、機会があれば今後こちらも紹介していきたいと思います。

 

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今月はサザンロックからブルースロック、ロックンロールからジャズにフュージョンそしてサポートギターまでこなす、スーパーギタリストのデレク・トラックスの紹介でした。
皆様のCD選びの参考にしていただければ幸いです。
それではまたお会いしましょう。

 

蝶道社オーナー
紺田 晴久