音楽紹介 [54] 『The Complete Verve Master Takes』

年々暑さを増す夏もようやく過ぎ去り、関東でもやっと秋らしい日が続くようになりました。

という訳で今年も絶好調に珈琲が美味い季節に浮かれ気味のサックス、門田”JAW”晃介です。

さて、昨年1年はJaw Jamming Yardと題していろんな方々とセッションを重ねてきましたが、その中のゲストのおひとり、同じテナーサックスの石川周之介氏との、テナー2本のみのユニット”Tenor Talk”が、サックス専門誌Sax Worldの表紙と巻頭特集に大抜擢されました!

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共演から1年ほどで異例のクローズアップをしていただきました今回の特集では、ビバップの開祖、チャーリーパーカーの”Blues For Alice”を二人のアレンジで収録しています。

そんな訳で今回のレコメンもレジェンド、チャーリーパーカーの作品で行こうと思います。

まずはバップ神の経歴を。


Charlie Parker 画像元: http://bit.ly/2JH8vhg

1940年代初頭から、モダン・ジャズの原型となるいわゆるビバップスタイルの創成に、ディジー・ガレスピーと共に携わった。
これにより「モダン・ジャズ(ビバップ)の父」とも言われる。初期の頃よりヤードバード(Yardbird)(起源は諸説あり)と呼ばれており、後に単にヤード、或いは、バードとも呼ばれ、特に後者が親しまれた。パーカー自身も”Yardbird Suite”や”Bird Feathers”といったタイトルを発表している。(イギリスのロックバンド、ヤードバーズの名は、これに由来。)

ニューヨークにあるバードランドはこの名称に由来し、ジョージ・シアリングの”Lullaby of Birdland”(バードランドの子守唄)やウェザー・リポートの”Birdland”といった曲もある。
アメリカ合衆国カンザス州カンザスシティに生まれ、ミズーリ州カンザスシティで育つ。子供の頃より、並外れた音楽の才能があった形跡はなく、彼に大きな影響を与えたのはインプロヴィゼーションの基本を教えた、若きトロンボーン奏者だった。父親はT.O.B.A.(アフリカ系アメリカ人によるヴォードヴィル)のピアニストやダンサー、歌手といった音楽への影響があるかもしれないと語っている。彼はプルマン社(鉄道会社)のウェイターやコックになった。彼の母親は地方のウエスタンユニオンに夜勤めていた。

1945年から1948年が音楽活動の最盛期であり、天才的なひらめきを伴ったそのアドリブは伝説化している。
1945年、若き日のマイルス・デイヴィスを自分のバンドに起用した。1947年にはマイルスの初リーダー・セッションもサポートする。ディジー・ガレスピーとともに『バード・アンド・ディズ」のアルバムを発表し、ビバップの誕生を告げた。アルバムにはセロニアス・モンクやカーリー・ラッセル、バディ・リッチも協力した。

若い頃から麻薬とアルコールに耽溺して心身の健康を損ない、幾度も精神病院に入院するなど破滅的な生涯を送った。1940年代末期以降は演奏に衰えが見られるようになった。衰弱により心不全で早世した。
亡くなった折、ニューヨークの至る所の壁には彼の早過ぎる死を惜しんだファンたちが『バードは生きている』と落書きをした。

作曲でも『オーニソロジー』『コンファメーション』『ナウズ・ザ・タイム』など、現在まで演奏されるユニークな作品を多く残した。ジャコ・パストリアスはデビュー作で、チャーリー作の『ドナ・リー』(実際はマイルス・デイヴィスの作品)を、ベースとパーカッションのデュオでカヴァーした。
死の数ヶ月前にニューヨークのチャールズ・コーリン社と生涯唯一の教則本 『YARDBIRD ORIGINALS』 の契約を行う(1955年出版)。出版の理由は、麻薬治療のための入院費用を捻出するためだった。この本について色々な憶測が流れていたが、契約書と同時に死後2ヶ月前にパーカーにより書かれた出版社へのクリスマスカードで、本人が行った契約だと再確認されている。2005年、『YARDBIRD ORIGINALS』 は、改訂され再出版される。

その教則本とは別に、2012年には、アメリカのハル・レオナード社から「The Bird Book:The Charlie Parker Real Book」という未発表曲を含めたジャズ演奏家のための公式シートミュージック集(テーマ部の楽譜集)が発表された。
彼の生涯は1988年製作の映画『バード』(クリント・イーストウッド監督)で描かれている。
(Wikipediaより抜粋)


Charlie Parker 画像元: http://bit.ly/33bexhW

実は前述の”Jaw Jamming Yard”というネーミングもチャーリーパーカーの愛称であるこの”Yardbird”のこともちょっとイメージに重ねていたり。。

思い起こせばぼくが初めてチャーリーパーカーの録音を聴いたのは中学生の頃、、当時憧れだった、近所の大学でジャズサックスを吹いていたお兄さんがダビングしてくれた、サヴォイ盤のカセットテープ2本。

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当時のカセットテープ↑

曲目毎に”×2”とか、”×3”とか書いてあって、なんじゃこりゃ?って疑問に思いつつ再生してみると、同じ曲がその数だけ入っていて、なんだか変なアルバムだなぁ、、と思いながら聴いていました。

アドリブソロのテイク違いをウリにしているマニア向けのアルバムだったので、中学生の自分には全くその本当の面白さはわかりませんでしたが、それでも聞こえてくる独特のフレージング、単音楽器なのに和音が聞こえてくるようなメカニカルで流麗なその音の連続にグッと心を奪われたのを今でも鮮明に思い出します。

”ソロのとこは毎回違ってなんだかよくわからないけど、最初と最後に出てくるところはちょっとメロディアスで良いな”とか、わからないながらも曲のテーマ部分を楽しんだりして聴いていたんだったと思います。
そんなマニアックなアイテムも良いのですが、今回紹介するのはもう少し敷居が低く、配信などでも比較的手軽に聴くことのできるこちら。

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The Complete Verve Master Takes
Charlie Parker

Disc 1
1. The Bird
2. Cardboard
3. Visa
4. Segment
5. Passport
6. Passport
7. Just Friends
8. Everything Happens to Me
9. April in Paris
10. Summertime
11. I Didn’t Know What Time It Was
12. If I Should Lose You
13. Star Eyes
14. Blues (Fast)
15. I’m in the Mood for Love
16. Bloomdido
17. An Oscar for Treadwell
18. Mohawk
19. My Melancholy Baby
20. Leap Frog
21. Relaxin’ With Lee
22. Dancing in the Dark
23. Out of Nowhere
24. Laura

Disc 2
1. East of the Sun (And West of the Moon)
2. They Can’t Take That Away from Me
3. Easy to Love
4. I’m in the Mood for Love
5. I’ll Remember April
6. Au Privave
7. She Rote
8. K.C. Blues
9. Star Eyes
10. My Little Suede Shoes
11. Un Poquito de Tu Amor
12. Tico-Tico (AKA “Tico-Tico No Fuba”)
13. Fiesta
14. Why Do I Love You?
15. Blues for Alice
16. Si Si
17. Swedish Schnapps
18. Back Home Blues
19. Lover Man
20. Temptation
21. Lover
22. Autumn in New York
23. Stella by Starlight
24. Mama Inez
25. La Cucaracha

Disc 3
1. Estrellita
2. Begin the Beguine
3. La Paloma
4. Night and Day
5. Almost Like Being in Love
6. I Can’t Get Started
7. What Is This Thing Called Love?
8. The Song Is You
9. Laird Baird
10. Kim
11. Cosmic Rays
12. In the Still of the Night
13. Old Folks
14. If I Love Again
15. Chi-Chi
16. I Remember You
17. Now’s the Time
18. Confirmation
19. I Get a Kick Out of You
20. Just One of Those Things
21. My Heart Belongs to Daddy
22. I’ve Got You Under My Skin
23. Love for Sale
24. I Love Paris

うわー3枚組、このボリューム、、全然敷居低くねー!!笑

いや、もう良いんです。どの道すでにここまでで相当マニアックなラインナップが続いてもはや誰もついてきていないと思ってますので、、、我が道を行きたいと思います(笑)

いやでもですね、パーカーの録音物はどれも似たような感じで、最初に紹介したsavoy studio sessionsとかもそうですが、オリジナルのオンパレードで途中で切れてるNGテイクとかもガンガン入ってたりするのも多いのですが、このverve時代の録音を集めた3枚組はオリジナルとスタンダードが良いバランスで、カルテット、ビックバンドバック、ストリングスバックと編成も色々と楽しめて、かなり聴きやすい部類だと個人的には思います。

曲数がえらい量なので抜粋して紹介を。

Disc 1
7.Just Friends

アルバムWith Stringsのイントロを飾る名演ですね。
ストリングスをバックに迷いや淀みなど一切なく端正に吹き切るパーカー節が心地よいです。

Disc 2
10.My Little Suede Shoes

パーカーのオリジナル曲で、スタンダードとして今でも広く親しまれているナンバー。
ぼくも今年リリースしたソロパフォーマンス集”JAW DROP2”に収録しました。
バップのイメージの強いパーカーですがこうしたラテンナンバーも結構好んで演奏しています。

15.Blues for Alice
冒頭に紹介したTenor Talkでカバーしたナンバー。12小節のブルース形式にをベースに、いかにもパーカーらしいコードチェンジを当てはめたオリジナル曲です。
(音楽的にもちょっと突っ込んだ解説と我々の演奏も、是非Sax World vol.14をお手に取ってお楽しみください!)

Disc 3
18.Confirmation

パーカーの録音の中で一番広く聴かれているものなのではないかなと思います。
名盤Now’s The Timeのラストに収録されているパーカーの代表曲ですね。
中高生の頃に一生懸命練習したのを思い出します。

34歳でこの世を去ったパーカーですが、その短い人生の中で残した演奏は、後世のジャズ、とりわけサックス吹きには絶対と言って良いほど何かしらの影響を及ぼしている偉人です。

自分もまた折に触れてパーカーの曲を演奏する度に、少しでも多くそのエッセンスを吸収出来るようこれからも愛聴して行こうと思います。

さぁ、最後になりましたがこれからいよいよ2019年も終盤戦、、
年の瀬は恒例のJAW meets PIANOMANによるツアーです!

今回で5周年を迎えるJmP、このツアーは年明け1月まで拡大して9公演の旅となります!

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こちらも是非チェックしてみてください♪

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それでは年末年始、各地ライブでまたお会いしましょう!

2019.10.31

門田”JAW”晃介