本コラムを掲載しておりますウェブマガジン『タシナム』は、社長の方々を中心に、仕事と遊びのイイ関係をテーマにしております。


 心を開放したり、発想を転換することで新たな発見に結びついたり。一国一城の主として第一線で活躍されている皆さんの遊びにかかわるお話を読むにつけ,実に様々な遊びの効用があることが見えてまいります。

 実は当方も、こういった『遊び』を通した発想の転換を映画の世界で体験したことがございます。そしてその映画、実は少々不思議な社長が登場する作品でもあるのです。

 

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画像元 : http://goo.gl/2gHx7m

 

 『グレムリン2
  1990年制作 アメリカ映画
   ジョー・ダンテ監督

 

『グレムリン2』。1990年の作品で、1984年に大ヒットした映画の続編です。

どうしていきなり続編の方を紹介するのか? それにつきましては、まず本作の物語に触れてからご説明させていただきますね。

 

 

《作品あらすじ》 

謎の生物『モグワイ』と『グレムリン』を巡る騒動から数年。主人公ビリーはヒロインのケイトと結婚し、ともに『クランプセンター』で働いていた。ある日、ビリーはビルの中で、前作ラストに離れ離れとなってしまったモグワイと再会する。ビル内ではひそかに『グレムリン』の研究が行われていたのだった。そして案の定グレムリンたちは暴走を始め、ビル内部で大騒動が立ち起こる…。

 

 はじめにお断りしておかなくてはいけないことがございます。この映画、ストーリーはこれだけ。これだけなんです。冒頭の人物紹介やシチュエーション説明が終わったあとは、ひたすらグレムリンたちの大騒ぎが描かれていきます。

 前作が、かわいらしいけれども謎の多い生物『モグワイ』との出会いから、その生き物に隠された秘密、巻き起こる騒動に立ち向かう主人公…。といった、ホラーコメディ調だったのに対し、今回は巨大なビルの中でのグレムリンの乱痴気騒ぎをひたすら描いた、なんとも説明のしにくい映画です。当然大ヒットを飛ばした前作とは対照的に興行としては大惨敗。裏切られた。前作のファンたちの大多数はそう感じたのでしょう。

 じゃあ、何でこんな続編にしちゃったんだろう?

 

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Joe Dante 画像元:http://goo.gl/d8aGYa

 
 実は、前作の監督ジョー・ダンテは、続編というものが嫌いだったのだそうです。

 映画の続編には、前作の主人公たちが現れ、前作の雰囲気や物語に沿った新たな冒険が描かれる。それが、『あるべき続編の姿』といえるかもしれません。しかしそれでは面白くない。ダンテ監督はそう考え、このようなとんでもない続編を作った、というのがあらましのようです。

 

 前述のように、この映画にストーリー展開というものは、ほぼございません。

 実験の失敗で実験室から飛び出した小さなモンスター『グレムリン』たちの繰り広げる大騒動と、それに振り回されながら何とかする羽目になってしまった主人公のドタバタ。

 それらの中には、あらゆるもののパロディが隠されています。前作の名シーンはもちろん、往年のホラー映画、マイナーなB級映画からミュージカル、果ては絵画といった美術まで。今年93歳で亡くなった『世界で一番映画に出演した俳優』ギネスレコード保持者・クリストファー・リーも、往年のB級映画を髣髴とさせる怪しげな科学者をとても楽しそうに演じています。

 また、そういった元ネタを知らなくても一向に構わないくらいに、細かい映像の仕掛けが織り込まれてもいます。

 

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『GREMLINES 2』 画像元:http://goo.gl/oTTYu2

 
 パロディ、そして驚くようなギミック。1つ1つに趣向が凝らされたグレムリンたちを観て行くうちに、ああ、この映画はストーリーを追うのはなく、この乱痴気騒ぎを楽しむためのものなんだな、と分かってきます。

 そしてそれが分かってきたころに、思わず『…え?』と唖然としてしまうような仕掛けが現れます。してやられた!…いたずらを仕掛けていたのは劇中のグレムリンたちではなく、監督自身だった、というわけです。

 この仕掛け、劇場で観ることで、はじめて思わず席を立ってしまうほどに驚くよう作られているのですが、大丈夫。ご家庭でご覧になれるDVDなどには、ご丁寧にもまったく別の仕掛けが仕込まれており、思わずにやりとさせられること請け合いです。

 

 つまり本作は、グレムリン達の『遊びを描いた映画』なのではなく、ダンテ監督による映画を使った『遊び』だったのです。

 この映画を『遊び』と捉え、その世界を楽しむことで「これも、映画なんだ。映画って、もっと自由でいいんだ」と発想をより柔らかにする手助けになるかもしれません。

 まさに、遊びの中でこそ見つけられる発見を与えてくれる映画、といえましょう。

 

こんな、遊びの世界を彩る登場人物の一人に、社長がおります。名前はダニエル・クランプ。おそらくモデルはアメリカの実業家、ドナルド・トランプ氏でしょう。

 

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Donald Trump 画像元:https://goo.gl/vQLOFq

 しかし人物像はモデルとは少々異なり、冒頭の自信に満ちた言動とチャイナタウンの再開発を進める役回りから「あ。いやみな悪役社長かな?」と思いきや、自ら渦中に飛び込んでいったり、転んでもめげない飄々とした行動派だったりという意外な姿を見せます。

 そしてこの社長、ラストもきっちり締めてくれます。主人公がビルをめちゃくちゃにしつつも事態を収束した後に、クランプ社長が彼にとある言葉を掛けるのですが、これがまた乱痴気騒ぎの結末にふさわしいあっけらかんとした処遇。ぜひ本編でお確かめください。

 実はこの社長もまた、この乱痴気騒ぎの一員、つまり大いに騒動を遊んだ一人だったのかもしれません。

 

 ちょっとつかみどころはないけれど、大らかでしたたか。そんな社長が所有するビルで繰り広げられる、遊び心に満ち満ちたとんでもない続編映画。

『グレムリン2』をご紹介いたしました。

 

  (2015.10. 文:黒田 拓)