サックス奏者 山田拓児さん インタビュー

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 ストレス解消の秘訣は『分析力』!

 

― 遊びと仕事の関係についてお伺いします。プロミュージシャンとして演奏されることが多いと思いますが、趣味で演奏する機会はありますか? 演奏の仕事と遊びを区別していらっしゃいますか?

山田「そうなんですよね、そもそも仕事自体が、まあ、遊んでいた結果(笑)、よく言えば、好きなことが仕事になったので、自分がいつからプロになったのか? という部分も含めて、線引きは難しいところがあるんですけれど。そもそもプロミュージシャンって何か? というと、これは僕の感覚ですが、ただ、税金を払っているかどうか。それだけです」

 

― 税金を払っているかどうか。それだけですか。

山田「うん。それだけ。プロだからっていい音楽を作っているとは限らないし。もちろん、僕はいい音楽を作ろうと目指していますけど。今でいうと、YouTubeで世界中の音楽が聴けますよね。それでアフリカのおばちゃんが洗濯しながら歌ってる、その歌声を聴くとね、すごいですよ。ああいうのが音楽の原点ですから。きっと世界中の多くの人が感動する歌声、でもあの人たちはプロとしては生活していない。だからプロかどうかというのは、音楽の質によって決まるものではないと思います。」

 

― 普段、ご自宅で休んでいらっしゃる時には、演奏の事を考えていらっしゃいますか?

山田「グレーゾーンが大いにあります。やっぱり…考えていますね。食事をするんだったら、1日3回、だいたい決まった時間にお腹がすくんだけれど、そういう湧き出てくるものって、いつ出てくるからわからない。じゃあ、スイッチを入れて、よし、創造してみるか。とかそういうのはなかなか難しいです」

 

― 自然に欲しい時には吸収して、湧き出てきたときには止めずに表現する。という方法でしょうか

山田「できるだけ、そういう風にしています」

 

― ストレスの発散法がありましたら、教えてください

山田「さっきお話した、絵を描いたりすることかな。基本的に音楽をやっているとストレスがたまらないんです。音楽をやってるからストレスになることもあるんだけど(笑)」

 

― 楽器に触れて、演奏をしている間はあまりストレスを感じていらっしゃらないんですね。

山田「僕の場合、ストレスとの因果関係が非常にわかりやすいんです。例えば、昨日の演奏のアレはいけなかった、とストレスを感じている。じゃあ、どこから修正すればいいんだろうかと分析できます。バンドでライブ演奏をすれば、うまくいく曲もあるし、うまくいかない曲もある。明らかに誰かのミスであっても、それを本人に対して『どうして?』とは言わない。バンドは家族なので、そのミスの原因はどこにあるのか。別のところからアプローチ出来ないかと考えます」

 

― お優しいバンドリーダーですね

山田「いやいや(笑)。音楽はミスしていいんです。そこが普通の仕事と違うところかな。人間らしいところが出てくる部分でもあるし、だから怖いということもある」

 

― そこでメンバーの自由な演奏を認める部分と、ご自身の理想がありますよね。その押し引きというのは難しくありませんか?

山田「難しいですね。ある程度の自分の方向性を理解してもらうというのが大事です。完璧なものを目指したいんだけど、それだけなら、完璧なミュージシャンと一緒にやればいいわけです。でも、そうじゃなくて、今いる素晴らしい仲間でどうやって音楽を作っていこうか。と考えるのが大事なのかな。と」

 

― ミスのない演奏と良い演奏が同じというわけではありませんものね。

山田「僕たちは部下でも同僚でもないんです。仲間のいいところをどうやって引き出すかを、いつも考えるようにしています。ミスしたって指摘するのは簡単だけど、ミスして一番傷ついているのは本人だから」

 

― 拓児さんがどういう思いでやっていらっしゃるのか、今お伺いしていて、バンドの雰囲気がイメージできるような気がします。次回はきっと、演奏を拝見したいです。

山田「是非! 」

 

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 子供に伝えるJazz、時代を伝えるJazz  ~分析眼が生む新たなプロジェクト

 

― 最後の質問になります。今後の目標と夢を教えてください。

山田「いくつかやりたいプロジェクトがあります。ひとつは、子供が音楽に触れる機会を作りたいと思っています。他にもよく、そういうプロジェクトがあるんですけど、ちょっと分かりやすくし過ぎてるんじゃないかと思うところがあって。たとえば、子供向けイベントだから、演奏曲はアンパンマンです、ディズニーです。とか、それをJazzアレンジで演奏してみました。とか」

 

― 子供が曲を知っているのが前提で、そこから音楽を抽出したイベントですね。

山田「それが、簡単で子供にわかりやすいと判断しているのは結局、親だと思うんです。あ、今思い出しましたけど、僕が通っていた横浜の幼稚園は、よく絵を描かされる幼稚園でした。僕はピカソの『ゲルニカ』という絵が好きで、大人が見てもなんだかわからない絵なんですが、ある子がそれを見て『うわっ!』と思う。ある子は、なんとも思わない。それでいいと思うんです。親が子供に対して期待する反応だけでイベントを作るのはどうなのかな。と思うんです」

 

― 今は、『幅広くみんなが楽しめること』が売れる条件だからでしょうか。

山田「本を見ても、『簡単! 15分で○○できる』とかね。音楽の教則本にもあります。そういうキャッチフレーズをよく見るんですが、でも、難しいものは難しいですよね。包丁も手も使わずに作れる料理もいいけど、包丁を握る。ひき肉を掴む、そういう感覚も大事なんじゃないかと思うんです」

 

― そういう生の感覚や、大人が楽しむ音楽をアレンジせず子供に体験してもらうイベントですか。

山田「子供達や親御さんの反応にとらわれず、良いものはそのまま子供に伝えていきたいと、以前から考えていました。早ければ来年とか再来年にそういうことが出来ないかな。と、今、打合せをしているところです」

 

― 面白そうですね!

山田「そう。あとは、面白いことを自分で作りたいというのはありますね。この仕事は待っていても来ないから」

 

― 今年の目標は決めていらっしゃいますか?

山田「一応ね、毎月の目標っていうのを書いているんです。でもね、全然達成できなくて(笑)。年内は新しいバンドを1つ組むというのがあったんですが、年明けになりそうです」

 

― これから拓児さんが目指しているJazz、そして音楽とはどういったものですか?

山田「自分がリーダーを務めるバンドと、自分が誘われて参加しているバンドとでは若干違いがあります。誘われて参加しているバンドでは、『僕(の音)じゃなきゃダメなんだ』という意識を持ってやっています。自分のトラ(代役)はいない。というイメージで、ずっと求められるプレーヤーでありたいと思っています」

 

― では、ご自身がリーダーの時はどうですか?

山田「自分のバンドではやりたい音楽をまっすぐ出していけます。Jazzって進化するものでもあるので、世代によって考え方が違いますよね。だからこそ僕の生きてきた時代、そして、これから触れることを出していけたらいいな。と思っています。4年くらい前にアフリカのモロッコへ行ったんですけど、その時、はじめてイスラム圏の国へ行ったので、文化の違いに驚きました。音楽には文化的なことが絡んできますし、特にJazzは宗教的なことも絡んできます。色んな文化、考え方、宗教観が存在する。Jazzってそういう意味で可能性のある音楽なので、自分が出したい音を自分で見つけていくこと。それを共感してくれる人を探していくこと。自分が何者なのか? ということを音楽を通して話していきたいです」

 

― ありがとうございました。次回のライブ情報、ぜひ聞きたいです!

山田「ありがとうございます。よかったら、ライブ観に来てください」

 

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※取材協力:KAMOME  http://www.yokohama-kamome.com/index.html

 
【山田拓児リーダーライブ情報】

10月 1日 取手 Jazz Dayz2016
10月 4日 横浜 Kamome
10月 8日 横浜 NHK横浜放送局 横浜ジャズプロムナード 横浜NHK-FM公開生放送
11月 4日 江古田 ソルトピーナツ
11月29日 銀座 Velera
12月 5日 南青山 Body&Soul
 
※詳細、その他のライブは以下の公式Webページをご覧ください。
  
 

【山田拓児 公式web ページ】
http://www.takujiyamada.com/

【山田拓児 Facebook】
https://www.facebook.com/takujazz

  

06-3山田 拓児 (やまだ たくじ)
1980年 2月11日生まれ 江別出身 血液型 B型 

 1998年洗足学園短期大学ジャズコース卒業。
米国バークリー音楽大学留学。卒業後ニューヨーク
に拠点を移し様々なセッションやライブを
行う。
 2008年帰国、日本での活動を開始。
米国、日本で
CDアルバムを発売、高く評価され
国内外から注目
されるアーティストの一人となる。

洗足学園音楽大学付属音楽教室の講師として後進
の育成にも努めている。
  

  (取材:2016年 6月)

 

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