株式会社 ジャパン・マルシェ 代表取締役 今野 広美 インタビュー

IMGP6072-2


現場力と応用力。これが台湾スタイル!


― 台湾との関わりは、どういったところから始まったのですか?

今野「今から11年くらい前に、夫が台湾に現地法人を作ったんです。その時、どういう仕事をしていたかというと、主に観光関係の翻訳のお仕事をしていました。当時、北海道が道の予算で観光のプロモーションを台湾へ仕掛けていて、知事をはじめ、多くの方が台湾を表敬訪問して、北海道をPRしたんです。例えば、パンフレットや広告メディアを台湾に持ち込んで、『是非、来てくださいね。○○温泉』みたいな販売促進の資料の翻訳や、通訳の派遣という仕事をしていました」

 

― そこから、物流のお仕事へと発展していくのですね。

今野「人の流れができると、次はモノの流れが出来るんです。今は、当時のサポート業務から発展して、食品の物流・貿易の仕事と、台湾・札幌での飲食店経営(北海道ラーメン『仁之藏』)という形に至ります。台湾での飲食店の運営は、現地法人のある夫の会社で行っていて、物流は夫の会社とは別に、私自身が法人を設立しました。それが『ジャパンマルシェ』です」

 

― 最初に札幌でラーメン店を開業されて、次の支店を台南にオープンされたのですよね。札幌の第1号店『仁の蔵』は何年に開店したのですか?

今野「2013年12月開店です。来月から3年目に入ります」

 

― 第2号店を台南に作られたのは、どういう理由があったんですか?

今野「最初は高雄に支店を作ろうと思っていました。台北に継ぐ第2の都市ですね。その高雄と台南は新幹線で15分位の距離なんですけど、ちょっと違うんです。高雄に比べると、台南はやや田舎なんですけど、台湾の人に『美味しいものの発信地は台南だ』という意識があることを知って、こちらに決めました。台北も高雄も、飲食店激戦区で日本食のお店も飽和状態なんです。諸経費もそれだけ高い。それに比べると、台南の方が経営も始めやすく、情報が広がるのも早いだろう、ということがあって、戦略的に見て、台南に出店を決めました」

 

IMGP6090-2


― 台湾での日本食というのは、現在、どういう現状にあるのでしょうか?

今野「今の台湾の現状をみると、各地の百貨店には必ず日本のラーメン店が出店しているというくらい日本食が定着しています。日本食の店舗数も非常に多くて、都心では飽和状態にあります。さらに、他の国と比べて、台湾から北海道へ旅行する方が非常に多い。みなさん北海道で本場の日本食を楽しんでいるので、味に対しても本物志向になってきています。台湾の方は意欲的で、様々なことを吸収するのがとても早いんですよ。日本で日本食を勉強してからこちらで開業したり、日本の台湾支店で修行してのれん分けしてもらい開業する人も増えてきています。その上、日本からの出店も増えている。日本と台湾の食は、これからも切っても切れない関係にあると思いますね」

 

― 今の台湾では、日本食が生活の中に定着しているんですね

今野「そうですね。今は納豆なんかも、私達が日本のスーパーで買うよりも多くの種類が台湾で売られています。日本全国からおいしい納豆が輸入されているので、日本人の私が見ても、へー。こんな納豆があるんだー。と驚きます。台湾ではご家庭の冷凍庫で納豆を保管して、食べたいときに解凍して召し上がるそうです。私は、納豆って冷凍できるんだ。ってこっちに来て知りました(笑)」

 

― ご家庭の冷凍庫に納豆のストックが保存されている状態ですか。定着してますね!

今野「その納豆をパンに乗せて食べたりしてる。逆に私達のほうが、日本食にこんな食べ方があるんだ!って教わることがあります。台湾人の発想力は日本人よりも豊かで、柔軟なんですよ」

 

― 台湾でお仕事をされる難しさというのは、どういうところにありますか?

今野「仕事をしようと思うと、両国に文化の違いや、仕事の進め方の違いがありますから、難しいことも色々あります。ただ、台湾の人は人情深いので、解かりあえるし、お互いを尊重しあえるんです。イエス、ノーがはっきりしているところも日本人とは違いますしね。私達が持っている台湾との接点は、仕事ですが、人としての関わりというのも持って行きたいと思っています」

 

― 今回、こちらの大学での特別授業というのも、そのひとつですね。

今野「そうですね。良いひとに出会えています。今後、仕事以外でも台湾のお友達とは長くお付き合いして行きたいですし、仕事がなくなったとしても、ロングステイをしてみたい。と思っています」

 

IMGP6172-3


― 因みに、参考までに聞かせてください。台湾でお仕事をされて、具体的にどういった部分が日本とは違うと思われましたか?

今野「台湾での仕事の進め方というのが、日本のように計画を立ててその通りに遂行するという方法ではないんです。台湾では大まかな枠、たとえば、いつまでに何をするか。ということだけ決めて、後は当日になんとかする。中身はどうあれ、そこに間に合わせる。それが台湾スタイルです。まさにフリースタイル!」

 

― 現場力が問われますね!

今野「そうなんです。問題解決力を発揮して、えい! やあ! と進める。日本では必ず、連絡、報告、相談ってやりますよね。それを確認したくて事前にあれはどうなった? って台湾人に聞いても、答えられないことが多いんですけど、当日になるとちゃんと出来てる(笑)。担当している案件の中には行政の仕事もあって、その場合は途中経過を報告しなくてはいけないのですが、その時は結構、困ります。『なんとかなりますよ!』とは言えないので、困りますね(笑)」

 

― そこは日本人から見ると不安に感じる方もいらっしゃるでしょうね。

今野「そう。日本人にしてみたら、まだ出来てない!? じゃあ、今すぐ計画を修正しないといけない! ってなりますよね。神経が細かい方は、大変かもしれない。例えば、日本物産の催事場なんかで、日本の炊飯ジャーを準備するように頼んだら、台湾の万能調理器・電気鍋(スロークッカーのようなもの)しか届いてない。とか(笑)。とりあえずそれで用は足りるでしょ? っていうことなんですけど、そこを譲れない人は難しいかもしれないですね(笑)」

 

― それは、応用力を試されますね。

今野「そう。これから台湾への進出を考えている方は、『じゃあ、これで何とかしますよ。』っていう大らかな気持ちで、台湾のフリースタイルに挑んでください(笑)」

 

  今野 広美 社長 インタビュー 】 【】 【】 【